授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
13139:[2025 秋セメスター]IR18‐FJ206 特殊講義(固有専門関連科目)(RE) § 13140:IR-EDR205 特殊講義(固有専門関連科目)(RE) 2025 秋セメスター 月4 国際関係学部 山本 忠通 2

キャンパス

衣笠

授業施設

恒心館KS209号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

【+R授業について】
9月20日までにmanaba+Rのコースニュースに+R授業の案内を掲載する。必ずmanaba+Rのコースニュースを確認すること。

現在、国際社会においては、第二次世界大戦後に構築された平和と秩序維持の制度がほころびを見せている。それは、①ロシアのウクライナ侵攻に見られるような大きな政治的な和平の実現や紛争の解決の面と②アフリカやアフガニスタンでの国連の平和活動が所期の目的を達成できないでいる(できなかった)ことに見られるようなより技術的な平和活動の面の双方においてである。
講師は、国連事務総長特別代表(国連事務次長)として、アフガニスタンでの国連の活動を約6年間(そのうち1年半は副代表)統括した経験とそれに先立つ40年間日本の外交官として活動した経験を有している。講義では、その実際の経験を基に、国際社会が紛争解決、処理のためにいかなる努力をしてきたのかをレヴューし、問題を解決できない理由と事情について検討する。特に講師が責任者を務めた国連の平和活動、就中アフガニスタンでの具体的な活動を例に、実際の活動はどのように行われているのか、また、どのような問題に直面しているのかを学ぶことにより、理論を超えて実際の活動のについての理解を深める。そのうえで、今後の国際秩序と平和の維持、構築の在り方について考える。
国際社会では、紛争が絶えないのが現実であり、さらに近年は、平和を回復し、社会を安定させるための活動は複雑さを増していること;平和活動は、治安維持、政治的安定、和平、人権の確保、人道・開発援助など多岐に及ぶ総合的な活動であることを学ぶ。

受講生の到達目標

第二次世界大戦以降続いてきた現在の国際社会の秩序維持のための制度は、ウクライナへのロシアの侵攻や、中東、アフリカでの紛争により大きな挑戦を受けている。なぜそのような状況にあるかを理解するとともに、国連の平和活動の実際と課題について理解を深める。
アフガニスタンでの講師の実際の経験を基に、国連が紛争解決の為に効果的に活動する為には、現地の複雑な事情、特に異なる発展段階からくる異なるものの見方や慣習についての理解が不可欠なことなど、世界の多様性について学ぶ。また、困難な状況下にあっても、人権や人間の尊厳を守ることの重要性を学ぶ。
冷戦終結直後のような自由民主主義についての楽観的な見方が影を潜め、ロシアや中国などが国際秩序の在り方に疑問を投げかけている状況の中で、国際秩序の在り方について自ら考える糸口を与える。

事前に履修しておくことが望まれる科目

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

挑戦を受ける国際秩序と平和:その歴史

第二次世界大戦後の国連の誕生とその最大の課題としての平和と秩序維持。
パワーポリティックスが物を言う現実:安保理と拒否権。
理想と現実、実効性と普遍性のディレンマにある国連。
国連平和維持活動(PKO)の誕生。冷戦後の平和活動の変質、複雑さの増大:国連平和活動の成功と失敗。
現在の国際社会と国連(の平和活動)が直面する課題と問題。

2

平和構築と国連の平和活動

国連平和維持活動(PKO)の誕生。
冷戦後の世界における平和維持活動の複雑化ー求められた平和構築。平和活動としてのより幅広い活動。
平和活動の成功と失敗。
平和活動の見直しと今後。

3

日本の平和活動

活動の歴史:国際平和協力法の成立-その背景と活動。
その限界と今後の課題。
(日本の平和活動に責任を有する政府関係者による講義となる可能性が高い。)

4

4―9回は、アフガニスタンにおける実際の国連の活動を例に、経験を交えながら平和活動の諸局面を考察する。そのことにより、理論的な面だけでなく、実際に国連が、平和活動の実施機関として仕事を行うに当たって直面する問題についても理解を深める。それにより、国連平和活動の複雑な諸相と課題への理解が深まることが期待される。
4-9回の授業の理解をより深める上で、教科書が役立つことが期待される。

第4回目の授業は、その第一回目として、アフガニスタン問題とはどのような問題なのかについて概観する。

歴史的経緯を含みアフガニスタン問題とは何かについて説明したのち、国際社会とその中での国連の役割について考察し、次回からのより踏み込んだ議論に備える。
国連の関与の態様(国連安全保障理事会によって与えられたマンデート、任務)、国際社会の20年に亘る関与とタリバンの復権、そして、国連平和活動(国際社会の関与の在り方)の反省点等を概観する。

5

内政の安定と選挙

国際社会は、アフガニスタンにおいて、全ての国民が代表される民主的政治体制の樹立を目指した。国連はその為に国際社会を代表して活動した。政治勢力が対立する中で内政を安定させることの困難さと政治的に民主的な選挙を受け入れる土壌が十分でないところでの選挙(議会及び大統領)の困難さと問題を考察する。その際、国連の比較優位、限界をも考える。

6

和平と和解 (主要関係国及び周辺国との関係の考察を含む)

国際社会は、タリバン抜きでアフガニスタンに新たな民主的な政府を樹立することを目指したが、タリバンが勢力を盛り返し、反政府軍事活動を展開したことから、タリバンとの和平と和解は、政治的に最も重要な課題となった。
2001年9月の同時多発テロ事件の後、多国籍軍の攻撃を受けてタリバン政権は瓦解したが、2005年ごろから勢力を盛り返し、テロ攻撃を伴うタリバンの攻撃の下、治安は劇的に悪化。多数の民間人死傷者が生じる事態となった。米国を中心とするタリバン殲滅作戦は成果をもたらさず、2014年以降タリバンとの和解と和平を目的とする動きが本格化してくる。2020年2月に米国とタリバンとの間で合意が成立するが、同合意に基づく和平プロセスは進展せず、2021年8月15日、カブールはタリバンの下に陥落した。この間の和平の動きを概括し、紛争解決と和平プロセスにおける国際社会、特に国連の役割について、限界と課題を含め考察する。

また、平和活動は、対象国と国連との関係だけで終わるものではない。関係国と周辺国を含む主要国との関係は、その行方を左右する。
アフガニスタンの場合、特にこの面の影響は大きい。アフガニスタンは、その地理的位置に鑑み、昔から大国の勢力争いの場所となり、「帝国の墓場」と言われてきた。
6カ国に囲まれた内陸国でもあり、タリバンもパキスタンに本拠を置いて戦ってきていた。
20年間の国際社会の支援に際しても、米ロ中欧日を始めとする主要関係国及びパキスタンとイランを含む近隣周辺国との関係は、大きな影響を与えた。
国連の平和活動もこれら諸国との関係なしには実施できなかった。その実態と問題点をも併せ考察する。

7

開発援助と国際支援調整

平和活動の大きな活動の柱は開発支援である。まさに国家建設に繋がる活動である。
アフガニスタンにおいても開発支援と、ドナー国の支援の調整は最重要任務の一つであった。多くのドナー国や周辺国からの援助が行われ、その総額は、世銀に拠れば2001年から2020年までで770億ドルを超えた(もっと大きいとの数字もある)。この援助が効果的に、アフガニスタン政府の開発計画を支援する形で行われるように調整する役割を国連は担っていた。その為、年二度のハイレベルの国際会議を開催し、その内二年に一度は、閣僚会議であった。また、約20の国連専門機関がそれぞれの役割を担って活動しており、それらの活動を、効果的に調整する役割もあった。国連の果たした役割を説明し、課題について考察する。NGOの役割についても考察する。(故中村医師の活動は、現タリバン政権を含むアフガニスタンの人々から今でも高く評価されている。)

8

人権問題と法の支配、女性の権利擁護とエンパワーメント、報道の自由

平和活動で最も大事なことの一つが人権と法の支配である。紛争から立ち直る社会に持続可能な秩序と人間の尊厳を与えることは、平和活動の目的そのものである。
アフガニスタンの場合、戦闘とテロ活動の激化に伴い、1年間に約1万人の民間人死傷者(4000人近い死者)が生じる中、国連として民間人死傷者を減らす努力をタリバン、アフガニスタン政府、米国軍に対し行った。
また、戦闘が行われている社会であることに加え、保守的な伝統社会で活動することからくる問題も大きく、真剣な対応がなされた。その最たるものの一つが今でも大きな問題となっている女性の権利擁護(教育を含む)とエンパワーメントであった。
人権と人間の尊厳に関する諸問題について、国連の活動を説明すると共に、伝統的な社会において西洋流の自由主義の価値に基づく人権の考え方を適用することの難しさについても考察する。
また、腐敗は、国民の政府に対する信頼を蝕み、タリバン復活の大きな土壌になったと思われる。腐敗撲滅対策の難しさについても考察する。

9

難民問題と人道支援

現在、紛争による難民問題は、世界的に大きな問題になっている。アフガニスタンはその最たるものの一つである。パキスタンとイランに2-300万人ずつ以上の難民が流入し、トルコなど近隣国にも多くの難民がいる。加えて、国内避難民も数十万人出て、アフガニスタンにおける難民問題は、世界でも最も深刻なものの一つとなった。故緒方貞子女史が、国連難民高等弁務官としてアフガン難民のために尽力したことは良く知られている。この難民問題についての国連の努力を説明する。
また、アフガニスタンは、最貧国の一として、多大の人道支援を受けた。しかし、20年間の支援を経ても、貧困は無くならなかった。戦闘が続く中の人道支援の困難についても考察する。

10

国連平和活動の課題と新たな展開:アフガニスタンからの教訓をも含む

これまでのアフガニスタンについての考察をも踏まえて、国際社会と国連の平和活動の課題と今後を考える。

停戦監視と兵力引き離しの為の平和維持活動として始まった国連の平和活動には、冷戦後の世界の中で、平和構築としての期待が高まり、求められることも大きくなっていった。同時に課題も多く出てきた。実際に、平和活動には、成功例もあるが失敗もある。それを踏まえ、本格的な見直しの為の検討が二度行われた。最初のものは、2000年の「ブラヒミ報告書」で、元アルジェリアの外務大臣のブラヒミ氏の下でまとめられた。更に、2015年に潘基文事務総長の命を受けて「国連平和活動に関するハイレベル独立パネル報告書」が纏められた。これら報告書の主要論点を説明する。その内容は、現地への配慮の必要性など、アフガニスタンからの教訓と共通するものが多く、アフガニスタンからの教訓も考察したい。。
また、今年の5月には、ドイツで、平和活動に関末う閣僚会議が予定されている。(注:シラバス執筆は、2月時点。)

11

国際秩序維持のための国連の努力と考え方の変遷

冷戦直後の世界における自由民主主義についての楽観的な見方は、ロシアのウクライナ侵攻や、アフリカ等における平和活動の困難さの中で影を潜め、米国と中国の対立も懸念される中、国際秩序の維持については、見直しの必要性が、強く認識されるにいy経っている。国際社会における秩序維持の歴史を振り返り、グローバリゼーションが進むなか、現在国際社会が直面している課題を考察する。

12

安保理改革

国連は、二度の世界大戦を経て、戦争の惨禍を二度と繰り返さないとの決意の下に創設された。しかし、国際社会の現実は、国連が当初期待された役割を現実化できるものではなかった。
そのような中で、安保理は、第一義的に平和と秩序の問題について責任を持つ。その決定は、全ての構成国を拘束するものである。しかし、大国の参加を可能とするために考案された拒否権は、却って安保理の効果的働きを妨げる事態をももたらしている。
安保理を改革し、国連により効果的役割を果たせることにする為の努力は、長年に亘り重ねられてきており、特に2005年(国連創設60周年)には、集中した努力も行われた。しかし、結果に結びつかなかった。
ロシアのウクライナ侵攻や、ガザ戦争が起きる中、その改革の必要性は、これまでになく叫ばれている。その現状を考察する。

13

現在の国際社会における国連の役割

前回(第12回)は、平和と秩序維持の問題について、安保理改革を中心に考察した。今回は、国連全体として、今の国際社会の安定と人類の発展の為に何をなしうるのかについて、国連への期待と限界、及び、可能性について考察する。
人類が将来に向けて共有する課題とその克服のために国連が果たせる役割についての期待は大きい。この分野で国連が果たしてきた役割と今後への期待について考察する。“Our Common Agenda (2021)とSDGs”や"New Agenda for Peace (2023)"及び、"Pact for the FUture(2024)"に見られる国連の動きも紹介する。

14

国際平和維持と日本

このコースの最終回であるので、これまでの総括として国際秩序の今後の在り方と国連の役割を整理すると共に、国際社会の中で主要な役割を果たすことのできる力を有する日本として、何が出来るのかを検討する場としたい。
出来れば、インタラクテイィブな授業としたく、この授業に間に合うようにレポートの課題を出し、受講生の提出したものをも踏まえて議論するクラスとなることを期す。その為に受講生の協力をお願いしたい。

授業実施形態

 基本的には全ての授業を対面で実施する。

授業外学習の指示

普段から国際社会の動向、特にロシアのウクライナ侵攻やガザ戦争の行方、米中間のライヴァル競争など国際秩序の根本に係る動きや国連の主要な動きなどがニュースになる時は気を付けてみることが望ましい。
また、アフガニスタンについての講義に際しては、教科書を読んでいることが望ましい。
また、授業用のリーディング・リクアイアメントは出さないが、前以て資料(例えば、国連のOur Common Agenda)が配布(オンラインを含む)される場合は、目だけでも軽く通しておくことが望ましい。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

出席して授業をよく理解することが重要である。(45%)
授業中に区切れの良いところで簡単なレポートを書いてもらう。(45%)
授業中のの積極的な貢献も評価される。(10%)
複雑な状況の理解度と、それを踏まえ自らどう考えているかが評価される。

成績評価方法(備考)

授業は、複雑な問題を扱い、且つ、多岐に亘るので、授業に出て、よく理解することが重要である。
その理解の上に、自らの問題意識を持つことを評価する。
必ずしも答えがある世界ではないので、考え方をしっかり持つことが重要である。
(与えられた課題から離れた議論を行うレポートは、内容が良くても評価は低くなるので念の為に申し添える。)

受講および研究に関するアドバイス

扱う問題は、国際社会が、正に取り組みつつある問題である。
それだけに生きた問題だが、普段はあまり考えることが多くないと思われる途上国の現実を考え、人類の将来のために何をすることが必要かを考える機会でもある。先入観を持たずに、人間を大事にすることの重要性を意識して考えて欲しい。

教科書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
アフガニスタの教訓 挑戦される国際秩序 山本忠通、内藤正典 集英社 978-4-08-721224

教科書(使用頻度、その他補足)

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
国際連合 明石康 岩波書店 4-00-431052-0
平和構築入門 篠田英朗 筑摩書房 978-4-480-06741-8
アフガニスタンを知るための70章 前田耕作、山内和也編著 明石書店 978-4-7503-5243-5

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

Report of the High-level Independent Panel on Peace Operations on uniting our strengths for peace: politics, partnership and people A/70/95–S/2015/446

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

学生との直接対話

備考

この授業は、アフガニスタン問題への国連の対応を4年近く(副代表を含めると5年半)責任者として統括した講師が、その実務経験を踏まえて、より広く国際平和活度全般について考察するものである。
アフガニスタン問題は、普段、考えることのない問題だと思われるが、複雑であるので、その実態を知った上で授業に参加することが望ましい。授業は、教科書に沿って行うものではないが、同教科書は、アフガニスタンにおける国際平和活動について、問題点や課題を含め考察するものであるので、授業をより深く理解する上での手助けとなる。
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:https://secure.ritsumei.ac.jp/students/pathways-future/course/curriculum.html/