授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
50390:[2025 春セメスター]非営利組織論(P) 2025 春セメスター 木3 政策科学部 桜井 政成 2

キャンパス

OIC

授業施設

AS257講義室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

 非営利組織は英語ではNPOといい、アメリカなどでは病院や美術館や私立学校などを運営する非営利の法人すべてを指す用語です。しかしNPOが日本で持たれているイメージは、特定非営利活動法人(NPO法人)を中心とした、市民活動団体のことである場合が多いです。NPO法人は1998年につくられた比較的新しい非営利法人格です。それまでの公益法人や学校法人・医療法人といった非営利法人格と比べ、市民が自由につくることができ、行政の関与をあまり受けず、組織運営でアカウンタビリティを求められるという特徴があります。また、日本ではまだあまり馴染みのない呼び名ですが、この領域の組織を「社会的企業」と呼ぶことも世界的には増えてきました。

 もっと簡単にNPOのことを表現するならば、「善きことを為そう(成そう)とする組織」でしょうか。こう表現したとき、疑問となる点は、誰(何)にとっての善きことなのか。それは本当に善いことなのか。あるいはどうやって為すのか。といったことかと思います。それらのことを考えるのが本講義の狙いであり内容になると思います。

 NPOはじっさい、様々な社会問題の解決に寄与していると言えるでしょう。具体的にはまず、NPOは地域コミュニティの活発化、まちづくりや市民参加促進に寄与しています。また、介護や保育、教育・福祉などの社会サービスの提供を先駆的・柔軟的に行っています。さらに国際的には途上国支援や紛争解決を行なっていたり、また被災地の復興にも活躍しています。2011年の東日本大震災では支援活動に多大な役割を果たしました。そうした活動は、ときには政府(行政機関)や営利企業ともパートナーシップを組み、地域の課題解決に当たるものでもあります。

 しかしNPOのことを考えるためには、そのNPOが活動を行なっている社会的・政治的・経済的な背景もまるごと含めて検討しなければ、その活動意義や課題を理解することはできません。その意味でNPOは、学問横断的な政策科学で検討すべき題材であると言えるのです。

 本授業では上記の内容の理解を深めるために、主として反転授業と呼ばれる方式をとります。受講生は授業外で授業の予習準備で論文の読み込みやレポート等の課題をこなし、授業では、テーマディスカッション、ケースディスカッションと呼ばれるグループディスカッションに参加します(あるいは、そのディスカッションを視聴するオーディエンスとなります)。

 授業前半は講義が中心となります。ここではNPOを中心とした日本の市民活動の概要を理解するために、ボランティア活動、寄付、社会参加といった、いくつかのトピックを切り口に学んでいきます。

 授業後半のケースディスカッションでは、NPOや市民社会の実態・課題について、複数の資料に基づきながら、包括的かつ理論的な理解を目指して行われます。自由な議論よりも、資料に基づいた発言を重視します。根拠ある(エビデンス・ベース)発言をすることによって、論理的で説得力ある、建設的な議論の仕方を学ぶためです。

 このように本授業では、大量に論文等を読み、大量に文章を書き、ディスカッションも行う方式の授業です。受講登録の際にはきちんと理解し、登録を行うようにして下さい。

受講生の到達目標

 前述の通り、本講義の意図は、NPO、NGO、市民活動、社会的企業といった分野での取り組みが、具体的にどう社会問題の解決に寄与しているのか、実践的に学ぶところにあります。そのため本講義の副題としては、「市民活動技法入門」と付けることができるでしょう。個々の市民の活動が草の根で切り結ぶ内容や方法、その背景にある課題や考え方を知り、それにいったいどのような意義があるのかを考え、実感することが大切だと考えています。受講生の「世界観」自体を新たに問い直しすることがこの授業の裏目的として存在してもいるかと思います。

事前に履修しておくことが望まれる科目

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

レクチャー①NPOとは何か

・NPOについての概念整理
・特定非営利活動促進法と特定非営利活動法人について

【+R 授業】詳細は manaba+R を参照

2

レクチャー②NPOはどのように社会問題を解決しているか

・NPOの存在意義についての理論的説明
・NPOの活動についての理論的説明

3

レクチャー③日本のボランティア

 ボランティアは、NPOにとって貴重な活動資源であると共に、市民社会の活発さを表す指標でもあります。日本のボランティアは、どのような特徴を持っているのでしょうか。またそれは、NPOの活動にどのような影響を与えているのでしょうか。諸外国とも比較しながら、検討したいと思います。

4

レクチャー④日本の寄付:どのような状況か。成果と課題は何か

 寄付は、NPOにとって貴重な活動資源であると共に、市民社会の活発さを表す指標でもあります。日本の寄付は、どのような特徴を持っているのでしょうか。またそれは、NPOの活動にどのような影響を与えているのでしょうか。諸外国とも比較しながら、検討したいと思います。

5

レクチャー⑤ソーシャルという「広がり」:社会的企業と社会参加

 近年、日本ではNPOやボランティア活動への参加については「ソーシャルな活動」あるいは「ソーシャルセクター」などと呼ばれることもあります。それらはなぜ、そう呼ばれるようになったのでしょうか。このことについて。主に「社会的企業」という概念の世界・日本での広がりを通じて、それを授業の中で考えていきたいと思います。

6

レクチャー⑥ここまでのまとめとコロナ禍でのNPOの課題

・ここまでのレクチャーでの内容の補足に加えて、コロナ禍でNPOやボランティア活動、寄付がどのように変化しているか。
・次週から行うケースディスカッションについて改めて確認します。

7

ケースディスカッション①当事者主体の過疎地域活性化:夢未来くんまを例に

(対授業予定)
日本創生会議が、少子化や人口移動に歯止めがかからず、将来に消滅する可能性がある自治体を「消滅可能性都市」と名付け、具体的な自治体名をあげたことで、全国に衝撃が走りました。住民達の努力で地域を活性化させ人口減少問題に歯止めをかけられる可能性はあるのでしょうか。静岡県浜松市天竜区熊地区での事例を参考に議論します。

8

ケースディスカッション②地域通貨を用いたまちづくりと子ども支援:暮らしづくりネットワーク北芝を例に

 箕面市にあるNPO法人「暮らしづくりネットワーク北芝」は、地域包括的に支援しているNPOです。かつての(あるいは現在でも)同和地区と呼ばれる地域での活動が中心です。子供から高齢者まで多様な人々に必要なサービスを提供するだけでなく、その人々がまちづくりに参画し、コミュニティをつくるための仕掛けが様々に取り組まれています。その取り組みのなかでも、地域通貨「ま〜ぶ」について主として議論をします。

9

ケースディスカッション③平等な働き方を考える:わっぱの会を例に

 一般の労働市場から排除されがちな人々は何らかの訓練・就労支援を必要とします。障害者はその典型でしょう。就労支援のNPOは数多く存在しますが、「わっぱの会」は社会的事業所というスローガンを掲げた、協同組合型のNPOです。企業や行政が行う就労支援とは何が異なるのでしょうか。また、それは、どのようにして実現しているのでしょうか。「わっぱの会」の理念と、それをどのように実行しているのかから、それらを学びます。

10

ケースディスカッション④子ども食堂と貧困・虐待問題

 日本の相対的貧困率(所得の中央値の半分以下で生活する世帯の割合)は、2015年時点で13.9%(全体では15.6%)となっており、7人に1人の子どもが貧困世帯です。従来の福祉施設での支援に加え、近年では様々な市民によって、食事支援や居場所づくりなどを目的とした「子ども食堂」が全国で広がっています。それらの取組は現状、子どもの貧困問題解決にどれだけ貢献できているのでしょうか。複数の資料からそれを考察します。

11

ケースディスカッション⑤景観保全運動と観光まちづくり:鞆まちづくり工房を例に

 広島県福山市にある鞆の浦は「潮待ちの港」として江戸時代に栄えた港町。道幅の狭い県道での渋滞問題により、1980年代から湾に橋を架ける「埋立架橋計画」が行政から度々提起されました。それは地域住民を賛成派・反対派に二分する事態となり、訴訟にまで発展。現在では埋立架橋計画は中止され、代わりのトンネル工事が進んでいるが、地域は高齢化し、活性化の課題が重く残っている。その経緯を踏まえ市民による観光まちづくりについて考えます。

12

ケースディスカッション⑥災害ボランティア活動:熊本大地震被災地支援を例に

 毎年のようにどこかで大災害が起きています。もはや日本は災害の間と間に暮らす「災間社会」になったという言われ方もします。多くのボランティアが活躍した1995年の阪神・淡路大震災はNPO法の設立に関連したと言われています。NPOやボランティアは被災者の支援をどのように行っているのでしょうか。NPO・ボランティアが被災者支援で果たす役割や可能性について、2016年に発生した熊本大地震における、KVOAD、よか隊ネット、大学生の活動、および2020年に発生した九州豪雨を例に検討します。

13

授業のまとめ

・講義で説明した重要なポイントについて補足する。

14

レポート提出相互添削ワークショップ

・本授業での成果を確認するためのレポート相互添削ワークショップを行う

授業実施形態

対面授業9回、メディア授業5回

授業外学習の指示

【ケースディスカッションについて】
・後半の授業(第6回〜12回)ではケースディスカッションを行います。これは、NPOや市民社会の実態・課題について、複数の資料に基づきながら、包括的かつ理論的な理解を目指して行われます。
・ディスカッションは全員登録必須ですが、受講生数が多い場合は抽選になります。ディスカッション登録しなかった(ディスカッション参加しない)人は課題の内容が変わります。
・ディスカッション参加は一人1回です。選んで参加していただきます。

【ディスカッション参加の登録について】
・manaba「アンケート」の「第1回授業内容の振り返り」でみなさんが参加するディスカッション回を登録します。manabaの「アンケート」に設けられた専用の登録コーナーから回答をお願いいたします。
・提出された希望を元に、manabaの「プロジェクト」をケース毎に作ります。「事前レポート」提出先になるので、自分が登録したケースディスカッションのプロジェクトチームに登録されているか、レポート提出日より前に確認をしておいて下さい。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

成績評価の方法と基準
<評価基準① 前半講義での授業振り返りをmanabaで提出>成績評価の20%(足切り)
…前半講義(第2回〜第6回)におけるmanaba上でのアンケート機能を使った「振り返り」への回答を提出。質問に答えるものと、単純に感想を書くものがある。3回以上提出がなければF評価。

<評価基準②前半講義テスト>成績評価の20%(減点評価)
…前半講義(第2回〜第6回)の授業内容に関するmanabaの小テスト機能を使った小テストへの回答。ランダムに問題が5問出題される。何度も回答可能であり、満点を取るまで回答すること。満点回答していない場合は成績評価にマイナス。

<評価基準③後半授業への参加および/またはその視聴> 成績評価の20%
1)ケースディスカッション参加者(最大50名程度)の場合
…前日までに「事前レポート」を提出。指定された資料を読み、当日のディスカッションに参加する。ディスカッションでは2回以上の発言を義務づける(3回以上の発言について加点評価)。また、ディスカッションに参加した授業以外の回について、1回以上の授業アンケートをmanabaから回答。
2) ケースディスカションに参加しない者
…ディスカッションに参加しなかった者は、第9回授業〜第13回授業のうちから最低4回分、manabaの授業アンケートから回答。アンケートの質問はディスカッションに関わる論点から設定される。さらに「基礎情報レポート」も提出する(これは上記の、ケースディスカッション参加者の「事前レポート」にあたるものとなる)

<評価基準④「最終レポート」の提出> 成績評価の40%
…本講義を通じての学びについてのレポート。テーマ・字数・形式・具体的な評価基準等は別紙及び授業内で指定。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

・課題が多いので、提出期限を忘れないようにし、タイムマネジメントと提出物管理に注意すること。
・授業に関しての質問は授業アンケートに自由記入欄があり、そこで質問することができます。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
福祉NPO・社会的企業の経済社会学 桜井政成 明石書店 9784750352701
東日本大震災とNPO・ボランティア 桜井政成編著 ミネルヴァ書房 978-4-623-06605-6
政策科学の基礎とアプローチ[第2版] 見上 崇洋 編著 佐藤 満 編著 ミネルヴァ書房 9784623054114
市民社会論 坂本治也 編 法律文化社 978458903813-5
コミュニティの幸福論 桜井政成 明石書店 9784750350899

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

manaba+R,その他(教員より別途指示)

備考

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URL:https://secure.ritsumei.ac.jp/students/pathways-future/course/curriculum.html/