授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
12534:現代史(S) 2022 秋セメスター 金3 産業社会学部 伊藤 健一郎 2

キャンパス

衣笠

授業施設

以学館IG402号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

***講義の内容、方針について質問のある人は私の個人メール
ito-ken@fc.ritsumei.ac.jp もしくは授業回ごとのコメントシートまでお気軽にどうぞ。

この講義の目標は、現在(いま)を歴史的文脈に置いて理解する態度を涵養することにある。現代をよりよく知るためには歴史から学ぶ必要があると考えるからである。
最初の1〜2コマにおいては日本の近現代史を概観し、それ以降、時代を区切って通史的に過去から現在に順に論じていく。(各回で論じる主題に応じて映像や音声等を素材として用いることもある。)

この講義では社会的に浸透した思考体系であるいくつかのイデオロギーの批判的検討をおこなう。様々な「思い込み」や「偏見」から解放されることは困難であるが、少なくとも自分自身が知らず知らずのうちにそうした「思考の癖」の影響下にあることに自覚的であることはできる。私は、そうした自己点検的な知のトレーニングこそ、大学で人文科学を学ぶことの意義であると考えている。以上を踏まえ、講義では歴史、経済、政治についての事実関係の整理にとどまらず、日本社会の文化ないし言語と政治の結びつきに踏み込み、社会心理学の学知を援用しつつ、社会の立体的な把握を試みる。

<キーワード:ネオリベラリズム/新自由主義、近現代史、第二次世界大戦、アジア・太平洋戦争、歴史修正主義、ファシズム、社会心理学、歴史社会学、歴史認識>

【授業の方法】
本科目は大学設置基準および立命館大学産業社会学部則において、区分を面接授業とする。詳細な実施方法については、manaba+Rのコースニュース、「授業スケジュール」および「授業実施形態」欄を確認のこと。

受講生の到達目標

講義で取り扱うテーマを自分なりに理解しようとした結果、以下の効果が期待できる。

1)日本の近現代史についてより精度の高いイメージを描くことができるようになる。
2)社会一般に流通している諸言説を相対化し、それらに流されずに論理的な思考を紡ぐことが可能となる。
3)政治的・社会的なイシューに関する判断の根幹をなす知識や考え方、歴史感覚を体得できる。

まとめると、政治的社会的なニュースに対するリテラシーが向上し「真偽のあやふやな情報」に流されるリスクが減る。

事前に履修しておくことが望まれる科目

基礎的な事項の復習も含むので、特に事前履修が必要な科目はない。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

オリエンテーション。現代日本社会の位置づけ(1)

歴史から現代を考える意味について。1〜2にかけて、歴史修正主義と新自由主義「改革」を軸に、1990年代以降の日本社会の姿を概観する。日本における雇用、教育、福祉の特徴を整理し、それがどのように論理のもとでどのように形成され、定着し、変化しているのかに触れる。

小熊英二『日本社会の仕組み』
橋本健二『日本の階級社会』(講談社新書)
・山本義隆『近代日本150年』(岩波新書)ほか

2

日本近代史の概観(1)

明治維新から現代に至るまでをひとつの時代とする日本近代化の歴史を概観する。中学や高校でこの時代についてしっかり学んだことのある人にとっては、ちょうどよい「復習」になるかもしれない。
前回の講義を引き継ぐ形で、「自己責任」文化の歴史的背景を明治社会に見出す研究を紹介する。
・見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書)
・山本義隆『近代日本150年』(岩波新書)
・松沢裕作る『生きづらい明治社会』(岩波ジュニア新書)ほか

3

日清・日露戦争と朝鮮半島

この講義では日韓の歴史を考える上で必要な知識を得ることを目的に、日本による朝鮮半島統治がどのようなになされていたのかを外観する。

木村光彦『日本統治下の朝鮮』(中公新書)
高崎宗司『植民地朝鮮の日本人』(岩波新書)

4

戦間期の歴史(1)第1次世界大戦〜満州事変前後

ここからは近現代史の転換点でもある第1次世界大戦後の社会に焦点をあてる。相対的な豊かさと自由があった時代にいかにして反動の契機が生じるかを学ぶことは歴史的視点を拡大するのみならず、現代的な意味がある。
(大正デモクラシー、関東大震災、治安維持法、満州事変など)
・川田稔『昭和陸軍の軌跡』(2011年、中公新書)ほか
・筒井清忠『戦前日本のポピュリズム:日米戦争への道』(中公新書、2018年)

5

 戦間期の歴史(2)日中戦争と社会の変化

いかにしてメディアは戦争協力をするにいたったか。軍エリートと官僚による国内政治の掌握はいかにして達成せれたかを整理し、日中戦争が彼らにとって何を意味したのか、戦場に送られた兵士たちは何を感じていたのかを学ぶ。

・井上寿一『日中戦争:前線と銃後』(講談社学術文庫、2018)
・加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、2016年)

6

ここまでのまとめ、満州国と戦後東アジア国際関係の連続性

ここでは、冷戦構造化での日韓保守政権の連携について、日韓基本条約の締結過程を軸に概観する。また今後の講義をよりよく理解すべく、いくつかの社会心理学の概念について説明を行う。

・加藤陽子『それでも日本人は「戦争」を選んだ』(新潮文庫、2016年)
・日本心理学会『心理学ミュージアム』「公正世界仮説」ほか

7

戦間期のドイツ:ナチスはいかにして台頭したのか

今回は、のちに破滅的な戦争を始めるに至るヒトラーがいかにして権力を掌握するにいたったのか、その背景と手法について学ぶ。もっとも「成功」した右派ポピュリズムの事例は、レイシズムや歴史修正主義等、関連性のつよい思想潮流が跋扈する今日、多くのことを教えてくれるように思う。

・石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社学術新書)
・リチャード・ベッセル『ナチスの時代』(中公新書)ほか

8

ナチ・ドイツの内政と外政

この回では、権力掌握後のナチが「外交」と「経済」による達成を宣伝することによって国内の指示を磐石のものとし、その後の戦争に突入する様子を整理する。
ファシズムによる政権奪取は、日本から遠く離れた国で起きた大昔の出来事ではなく、どの社会でも、いつでもおこりうる(あるいはすでに起きている)普遍的できわめて現代的なテーマである。

・石田勇治『ヒトラーとナチ・ドイツ』(講談社学術新書)
・リチャード・ベッセル『ナチスの時代』(中公新書)ほか

9

アメリカの人種主義文化

より現代的なテーマとして、アメリカの人種主義文化を、奴隷貿易期からトランプ政権を支えた白人至上主義までを概観する。関連する映像作品も多く、そのうちいくつかを視聴する。日本における人種偏見についての導入にもなるかもしれない。
またこの講義は、次回以降扱うアジア・太平洋戦争における日米双方に見られた人種主義についての基礎的前提を提供するものでもある。

渡辺靖『白人ナショナリズム:アメリカを揺るがす「文化的反動」』(中公新書、2020年)
ジェニファー・エバーハート『無意識のバイアス:人はなぜ人種差別をするのか』(明石書房、2020年)
ジョン・ダワー『容赦なき戦争』(平凡社、2001年)

10

日米開戦とアジア・太平洋戦争

「無謀な戦争」はいかにして始められたのか。どうして日本人は戦争を選んだのか。その結果、前線の兵士はどういう経験をしたのか。また、「大本営発表」に代表される戦時下の情報発信の様態を学ぶことを通して、政治権力によるメディアコントロールが世論にもたらす帰結について学ぶ。

・加藤陽子『それでも日本人は戦争を選んだ』(新潮文庫)

11

兵士たちの戦争体験:戦中派は何を語ったか。

大量の餓死と自殺、これが日本軍の特徴であった。太平洋を舞台として補給戦においては民間戦も戦争体制に組み込まれたが、多くが海の藻屑と消えた。戦場で精神を病み本国で治療を受ける兵士たちもいたが、彼らの存在は社会から隠された。精神力こそ大和民族が欧米との物質的・技術的遅れを埋める要素であると、軍・メディア・学校はしきりに宣伝していたからである。

吉田裕『日本軍兵士』(中公新書)

12

日本人の戦争観とその変化

日本人は戦争をどう捉えてきたのか。兵士として戦場を体験し、市民として都市爆撃を経験した人たちは戦争をどう理解し、戦後社会をどのように考えていたのかについて学ぶ。戦中派的批判意識が共有された時代が戦後であるとするならば、社会がその批判意識を継承することに失敗した時に「戦後」は終わりを始めると言えるのかもれない。

・吉田裕『日本人の戦争観』(岩波現代文庫)
・大岡昇平『俘虜記』(新潮文庫)

13

戦後日本の時代区分、ネット右派文化とその歴史的背景

日本を代表する社会学者の大澤真幸は戦後を25年ごとに分節化し、敗戦から70年安保までを「理想の時代」、その後のバブル期をすっぽりと覆う時期を「虚構の時代」、阪神大震災とオウム事件のおきた1995年を起点とする現在を「不可能の時代」と整理した。みなさんが生きてきた時代はこの「不可能性の時代」あるいは閉塞感と焦燥感をベースとした「不安の時代」である。その中で、いかにして希望を語るのか。大学には何ができるのか。自分たちはどういう局面に生きているのか。一度立ち止まって考える機会になると良いと思う。

またこの講義では、2000年代以降に台頭したネット右派について、それが生まれた歴史的背景をみつつ、その文化が言語と社会にもたらす影響について議論する。

大澤真幸『不可能性の時代』
田村あずみ『不安の時代の抵抗論』
伊藤昌亮『ネット右翼の歴史社会学』(青弓社)
中野晃一『右傾化する日本政治』(岩波新書)
倉橋耕平『歴史修正主義とサブカルチャー』(青土社)ほか

14

歴史認識問題を考えるために

「歴史認識問題」が社会的イシューとされて久しい。靖国神社をめぐる内外の対立に関心がありつつも、「賛成・反対」の合唱のなかで「ややこしいな。関わらないでおこう」という意識を持つ人も多かろうと思う。十分に理解できる話だ。この講義では、これまでの議論を踏まえた上で、靖国神社をめぐる論争なども踏まえつつ、「歴史認識問題」の何が「問題」なのか、明らかにする。
加えてこの講義では、歴史修正主義的言説と排外主義運動について、その成立の歴史的背景も含めて考察する。

・加藤典洋『敗戦後論』(ちくま文庫)
・赤澤史朗『靖国神社』(岩波書店)ほか
・大塚英志『おたくの精神史:1980年代論』(講談社現代新書)
・中野晃一『右傾化する日本政治』(岩波新書)
・倉橋耕平『歴史修正主義とサブカルチャー』(青土社)
・笠原十九司『南京事件論争史』(平凡社)
・大沼保昭『「慰安婦」問題とは何だったのか』(中公新書)

15

講義のまとめ

ここでは、これまでの講義に寄せられたコメントなどに応答しつつ、講義全体を振り返り、学びを確認する。

授業実施形態

【BCP レベル 1~2】
・申請者はZOOMでの同時配信を視聴できる。

【BCP レベル 3~4】
・第 1 回〜15 回を Web にて実施

授業外学習の指示

各回レジュメにあげられる参考文献や紹介した書籍から、セメスターを通して最低2冊は読むこと。
毎回の講義を受けてのコメントシートをmanaba+に提出してもらう。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 0

筆記テストはおこなわない。

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
40

3000字程度のレポート試験が出題される。講義で取り扱ったものを中心に複数のテーマから選択できるものとする。

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
60

小レポート課題が複数回にわたってmanabaに出題される。
またmanabaに提出するコメントシートも評価の対象とする。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

広く知識を求め、自分で考え、判断するクセをつけましょう。新聞、書籍、論文のみならず映画やドラマなどの文芸作品も時代を映す鏡です。誰かのブログ記事やSNS投稿はもちろんのこと、ふと聞こえてきた雑談、テレビから聞こえてくるコメント、そのどれもに情報としての価値があり、思考のきっかけとなります。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

特に指定しない。

参考書

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

インタラクティブシート,manaba+R,学生との直接対話

備考


【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html
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