授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
13391:[2025 春セメスター]IR18‐HJ301 専門演習(33) 2025 春セメスター 木4 国際関係学部 森岡 真史 2

キャンパス

衣笠

授業施設

諒友館RY307号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

【+R授業について】
この科目は授業に関連する活動時間を含めると+R授業に相当する授業時間数を確保できるため、+R授業を実施しない。

ゼミの最終目的は,参加者一人一人が学部での学びの集大成にふさわしい卒業論文を執筆することです。論文のテーマは原則として自由ですが,ゼミ内で文献を読み互いの意見を交えるための共通のテーマとして,2025年度のゼミでは,以下の問題について考える予定です。
 (1) 経済の成長とは何か? またそれはどのような要因によって規定されるか? 経済の成長は通常,GDPという指標で測られますが,この指標だけでは成長の本質はとらえられません。なぜなら,GDPは全ての経済活動を一つの数値に集計するために,私たちが仕事や生活で使う生産物の多様性や新たな生産物の登場という重要な情報を含んでいないからです。経済成長は,付加価値(所得)の量的な増大に加えて,生産物種類の累積的多様化と,それによる生活スタイルの持続的な変化を伴います。例えば,日本の高度経済成長の背後には,冷蔵庫,洗濯機,テレビ,エアコン,乗用車などが普及し,生活の利便性が高まりました。先進国ではGDPの成長が鈍化する一方で,スマートホンの普及や生成AIの登場が示すように,新たな生産物の出現はなお活発に続いています。
 新しい生産物が開発・販売される過程はイノベーションと呼ばれ,その基盤には,市場と営利企業を中核とする,資本主義という経済システムがあります。イノベーションは,新たな市場を形成する点で,成長のエンジンともみなせます。ゼミでは,資本主義経済はどのように世界に広がったのか,またそれはなぜイノベーションを通じて生産物の爆発的な多様化をもたらしてきたのかについて, 具体的な事例を通して考えます。
 (2) 私たちはどのような経済成長を追求すべきか? 新しい生産物は,既存のニーズや欲求をよりよく充足するだけでなく,新たなニーズや欲求を創造します。これまで使ったことがなく,なくても困らなかった生産物が,それを繰り返し使う間に,「なくはならないもの」に変わるのです。家電製品や乗用車は,当初は富裕層だけが買える「贅沢品」でしたが,今では,(グレードの違いを別とすれば)「必需品」となりました。また,趣味・嗜好・価値観・文化などの違いを反映するユニークな特徴をもった生産物は,消費における個性の追求を可能にしています。
 しかし,こうした消費生活における多様性・快適性・利便性の高まりの反面で,資本主義経済で暮らす人々の多くは,よりよい条件での仕事の獲得や商品の販売をめぐって,日々厳しい競争に直面しています。所得や資産には,家族間でも,また国と国の間でも大きな格差が存在し,多くの生産物を消費・利用するスタイルは,地球規模の重大な気候変動をもたらしつつあります。
 私たちは,資本主義経済のこうした二面性にどのように向き合うべきでしょうか? その手がかりの一つとなるのが,OECDや国連によって進められている,人間の幸福を,経済面の豊かさだけでなく,人間的な働き方,健康,住居,安全,仕事と生活のバランス,社会参加など,多様な側面から包括的にとらえた「幸福度」と呼ばれる指標を作成し,これを政策立案に活用していこうという試みです。ゼミでは,幸福度測定の試みの検討を通じて,望ましい経済成長のあり方・方向性や,格差を緩和し生活の質を高めるうえでのイノベーションの役割について考えます。

受講生の到達目標

(1)社会経済の諸問題について,広く文献・資料にあたり,事実と論理に基づいて分析的・批判的・多面的に考察する力を修得する。
 (2)共通テーマに関する集団的な発表・質疑・討論に積極的に参加する姿勢を身につける。
 (3)自分自身の個別的な研究課題に沿って継続的・計画的に研究を進め,一定の水準をもったタームペーパーと卒論を完成させる。

事前に履修しておくことが望まれる科目

経済理論の知識は前提しません。経済系の授業をとったことはなくても,テーマには関心があるという人も歓迎します。ゼミの参加者には,①旺盛な知的好奇心をもつこと,②先入観を捨てて頭を柔らかくする(一つの物事を多くの側面からとらえる)こと,③さまざまな立場・状況におかれた人間の思考や行動について想像力・理解力をもつこと,④本をしっかり読むこと,⑤恥ずかしがらずに発言すること.⑤論理的で正確な文章を書く訓練をすること,を求めます。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1-14

ゼミの運営方法

*3回生と4回生は合同で行います。通常のゼミではテキストを決めて,グループまたは個人で発表を行い,全員で討論します。また文献の講読を前提として討論のみを行うこともあります。
*manabaを活用し,掲示板上で発表者以外にも事前にコメントの書き込みを行ってもらいます。
*当ゼミでは,論文作成を重視しています。ゼミ参加者は,上記のゼミテーマに関連づけながら,タームペーパー・卒論執筆に向けたより具体的な個人テーマを自由に設定します。テキスト輪読と並行して,各セメスターの半ば(5月末頃/10月末頃)にタームペーパーの構想(テーマ,取り扱う問題,アプローチの方法,利用する資料など)を,次いで学部締め切りの二週間程度前にドラフトの提出を求めます。提出された構想とドラフトは,可能な限り,添削のうえコメントを付して返却します。このサイクルを繰り返しながら,構成力・文章作成力を高め,学びの集大成にふさわしい卒業論文の執筆につなげます。

授業実施形態

 

授業外学習の指示

・文献輪読に際して,発表者(発表グループ)となった場合にはレジメ・資料の作成に取り組む。発表班以外の人は文献をしっかり読み,疑問点や意見をManaba+Rに事前に提出する。
・設定された論点や他者の発表へのコメント・意見をManaba+R上に所定の期日までに提出する。
・授業内での個人テーマに関する発表に向けて計画的に準備を進め,進行状況の報告を行う。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

タームペーパー:40%
①テーマが明確であること,②データ・文献を的確に利用していること,③叙述が論理的であること,④参照・注記の形式が整っていること,の4点から総合的に評価します。

日常点評価:60%
出席を前提として,ゼミ内での発言や課題(グループ発表への参加,タームペーパー構想発表,予定論点への自分の意見の書き込みなど)の遂行状況を総合的に評価します。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

ゼミの議論では歴史の話がよく出てきます。高校時代(や大学入学後)に近現代史をあまりやらなかった人は,おおまかな流れだけでもおさえるようにしておいて下さい。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

下記の参考・推薦文献の中から,ゼミ生と相談のうえ適宜選択します。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
創造的破壊の力――資本主義を改革する22世紀の国富論 フィリップ・アギヨン他 東洋経済新報社 9784492396711 2023年
OECD幸福度白書5:より良い暮らし指標:生活向上と社会進歩の国際比較 OECD(編) 明石書店 978-4750351407 2021年
資本主義だけ残った――世界を制するシステムの未来 B. ミラノヴィッチ みすず書房 978-4622090038 2021年
絶望を希望に変える経済学: 社会の重大問題をどう解決するか A. バナジー&E. デュフロ 日本経済新聞出版 978-4532358532 2020年
21世紀の不平等 アトキンソン 東洋経済新報社 978-4492314708 2015年
人類の幸福論 キャロル・グラハム 西村書店 978-4890137763 2017年
大脱出——健康,お金,格差の起源 A. ディートン みすず書房 978-4622078708 2014年
貧乏人の経済学:もういちど貧困問題を根っこから考える A. バナジー&E. デュフロ みすず書房 978-4622076513 2012年
幸福度をはかる経済学 ブルーノ・フライ NTT出版 978-4757122734 2012年
それをお金で買いますか マイケル・サンデル 早川書房 978-4150504199 2012年
市場を創る:バザールからネット取引まで ジョン・マクミラン NTT 出版 978-4757121270 2007年
「豊かさ」の誕生:成長と発展の文明史 バーンスタイン 日本経済新聞社 978-4532197681 2006年

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

OECD より良い暮らし指標 http://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm
World Happiness Report 2022 https://worldhappiness.report/ed/2022/

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

学生との直接対話,その他(教員より別途指示)

備考

過去の卒業研究(卒業論文)テーマ一例
「欲望の理由――現代社会における欲望発生論の考察」(2011) 「途上国開発におけるICT活用の意義と現状」(2012) 「デンマークの労働市場政策――2008年の世界金融経済危機と政策の歩み―」(2013) 「日本人女性の洋装化はなぜ男性よりも遅れたか――欧米における衣服近代化との比較の視点から」(2013) 「貧困削減に資する投資政策−−東アジアの経験から」(2014) 「アメリカの肥満と貧困—―住宅環境・食糧供給・教育の関連性とその影響」(2015)「CSRの展開と株式投資:「責任ある投資」が日本企業に与える影響」(2016)「タイにおける都市化と国内格差に関する課題」(2017)。「台湾の女性就労―結婚・出産期と中高年層における労働力率の日韓との比較」(2018)。「グローバル・サプライチェーンにおける「ビジネスと人権」」(2022)これらはいずれも父母教育後援会の卒論部門(2017年度から学部長表彰制度卒論部門)で優秀賞あるいは教育賞を受賞した論文です。
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:https://secure.ritsumei.ac.jp/students/pathways-future/course/curriculum.html/