授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
13779:刑法Ⅱ(各論)(JC) 2022 秋セメスター 月1-2 法学部 嘉門 優 4

キャンパス

衣笠/衣笠

授業施設

存心館ZS301号教室/存心館ZS301号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

 刑法各論は、殺人罪、窃盗罪、放火罪といった、刑法に規定されている各犯罪の保護法益の内容や成立要件等について学ぶ科目です。基礎科目である刑法総論では、刑法の基本原理、因果関係や故意・過失などの犯罪の成立要件、正当防衛・緊急避難や責任無能力などの犯罪の成立を妨げる(阻却する)事由、および未遂や共犯などの処罰を拡張する事由について学習しました。
 刑法各論では、刑法総論の学習内容を前提としつつ、個別の犯罪ごとに、その内容や他の犯罪との関係について学びます。例えば、刑法235条は、他人の財物を窃取した者を窃盗の罪とすると規定していますが、ここでいう「他人の財物」や「窃取した」という文言の意味内容について、詐欺罪や遺失物等横領罪などの関連する他の犯罪との相違点を踏まえながら理解することになります。
 この講義では、各犯罪に関する条文の意味内容を理解することに加えて、判例の事案をはじめとする具体的事例の検討を行います。その際に重要なのは、単に有罪か無罪かということだけではなく、各犯罪の成立要件や他の犯罪との相違に関する理解に基づき、有罪とされる場合にどのような犯罪が成立するのか(罪名)について、的確に論証することです。そのために必要となる論述の方法等も、適宜解説します。

 授業内容に関する質問は、manaba+Rやメールなど、オンラインで随時受け付けます。質問に関する回答については原則としてmanaba+Rにおいて行います。また、定期試験及び提出課題については、講評を行います。

受講生の到達目標

受講生のみなさんには、この授業を受講することによって、以下の能力を獲得することを目指してもらいます。
①刑法各論における基本的な概念を理解できるようになる
②刑法各論における重要論点について、特に判例について理解できるようになる
③法的三段論法を使って、説得的な論述ができるようになる

ただし、以上の能力を獲得するためには、1)必ず授業に出席して、2)授業時には集中して、授業内容のポイントを聞き取りメモする、3)後述する予習・復習に取り組む
必要があります。
試験前に慌てて勉強するのでは間に合いません。毎週コツコツがんばりましょう。

事前に履修しておくことが望まれる科目

 受講者は、「刑法総論」の内容を基本的に理解しているという前提で進める。「法学入門」や「基礎演習」等の基礎的科目も同様である。特に「刑法総論」を履修していない受講希望者には、開講までに自習しておくことが望まれる。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
第1回

1 開講にあたって、刑法各論のあらまし

刑法各論の意味・学び方、刑法各則の概要、保護法益(個人法益、社会法益、国家法益)による分類

第2回

2 殺人の罪

人の始期・終期、自殺関与罪の処罰根拠と着手時期、自殺関与と他殺の区別

第3回

3 傷害の罪、過失傷害の罪、自動車運転と犯罪

傷害結果、傷害現場助勢罪、同時傷害の特例、暴行概念、凶器準備集合罪、単純過失と業務上過失、危険運転致死傷罪、過失運転致死傷罪

第4回

4 堕胎の罪、遺棄の罪

堕胎概念、母体保護法、堕胎罪と共犯、遺棄罪の保護法益・性格、遺棄行為、保護責任者遺棄

第5回

5 逮捕・監禁の罪、脅迫の罪

逮捕と監禁の区別、監禁と同意、逮捕・監禁致死傷罪、脅迫罪の保護法益、脅迫概念、強要罪

第6回

6 略取・誘拐・人身売買の罪、強制わいせつ・強制性交等の罪

 略取・誘拐・人身売買の罪の概略、営利目的、安否を憂慮する者、人身取引議定書、性的自由に対する罪と暴行・脅迫、わいせつな行為、強制性交等罪、監護者性交等罪、結果的加重犯と故意、淫行勧誘罪

第7回

7 住居を侵す罪、秘密に対する罪

住居侵入罪の保護法益(平穏説・住居権説)、公共空間と侵入、囲繞地への侵入、ポスティング、不退去罪、信書開封罪、秘密漏示罪

第8回

8 名誉に対する罪

名誉概念、公然性、名誉毀損の結果、事実の証明、真実性の錯誤、侮辱罪

第9回

9 信用・業務に対する罪、財産犯総論

信用・偽計・威力、業務と公務の区別、業務妨害の結果、財産犯の体系、財物・財産上の利益、財産犯の保護法益

第10回

10 窃盗の罪①(一般論、成立要件)

遺失物横領罪との区別、死者の占有、占有の帰属、不可罰的事後行為

第11回

11 窃盗の罪②(不法領得の意思、親族相盗例)

不法領得の意思、使用窃盗、毀棄罪との区別、親族相盗例の根拠

第12回

12 強盗の罪①(一般論)

暴行・脅迫、処分行為の要否、強盗予備

第13回

13 強盗の罪②(特別類型)

事後強盗・昏睡強盗、強盗致死傷、強盗・強制性交等

第14回

14 詐欺・恐喝の罪①(一般論、成立要件)

詐欺罪の構造、欺罔行為、誤振込、利得目的、交付行為・処分行為、財産的損害

第15回

15 詐欺・恐喝の罪②(個別論点)

相当対価の提供、訴訟詐欺、クレジットカード詐欺、キセル乗車、権利行使

第16回

16 横領の罪

占有物、二重売買、横領行為、不法原因給付と横領

第17回

17 背任の罪

事務処理者、背任行為、図利・加害目的、背任罪と共犯、背任と委託物横領との関係

第18回

18 盗品等に関する罪、毀棄・隠匿の罪

盗品罪の処罰根拠、本犯助長性、親族等に関する特例、毀棄・隠匿の罪の類型、建造物の他人性、ビラ張りと建造物損壊罪

第19回

19 社会法益に対する罪総説、騒乱の罪、放火および失火の罪

社会法益に対する罪の概要、危険犯、共同暴行の意義、放火罪の類型、焼損概念、建造物の一体性、公共危険の認識

第20回

20 出水・水利に関する罪、往来を妨害する罪、公衆の健康に対する罪

出水罪の類型、往来妨害の罪の類型、あへん煙に関する罪、飲料水に関する罪

第21回

21 偽造罪総論、文書偽造の罪①(基本概念)

公共の信用、偽造の罪の概要、公文書・私文書、形式主義・実質主義、有形偽造・無形偽造、文書概念

第22回

22 文書偽造の罪②(個別論点)

有形偽造の意義、事実説、観念説、肩書の冒用、通称使用、名義人の承諾、補助公務員の作成権限、間接無形偽造

第23回

23 その他の偽造の罪

通貨偽造罪、有価証券偽造罪、印章偽造罪、支払用カードの偽造、コンピュータ・ウィルスの作成・供用

第24回

24 風俗に対する罪

わいせつ概念、サイバーポルノ、賭博の罪、宗教的敬虔に対する罪、死体に対する罪

第25回

25 国家法益に対する罪総説、国家の存立・国交に関する罪

国家法益の意味、国家法益に対する罪の分類、内乱罪、外患罪、戦時犯罪、特定秘密保護法、国交に関する罪

第26回

26 公務執行妨害の罪

公務と業務の区別、職務の適法性、強制執行妨害の罪、公契約関係競売等妨害罪

第27回

27 司法作用に対する罪

逃走の罪、犯人蔵匿・証拠隠滅罪、参考人の虚偽供述と証拠偽造罪、親族に関する特例、共犯問題、偽証罪、虚偽告訴罪

第28回

28 汚職の罪①(職権濫用の罪、賄賂罪総説)

職権濫用罪、特別公務員職権濫用罪・暴行陵虐罪、賄賂罪の保護法益、賄賂の意義、贈賄罪

第29回

29 汚職の罪②(賄賂罪の派生類型、個別論点)

事前収賄罪、第三者供賄罪、加重収賄・事後収賄罪、あっせん収賄罪、職務関連性、必要的没収・追徴

第30回

30 事例問題演習

事例問題の解き方について解説します。

授業実施形態

【BCP レベル 1〜2 の場合】
 原則として、対面授業を実施します。ただし、大学の定める配慮事由(*)に該当する学生に対して、ライブ配信を提供します(この場合、原則として個別の申出を求めません。さらにやむを得ない理由によりライブ配信を受講できなかった方のために、録画データ等の授業資料をオンラインで提供します)。
 原則として、すべての授業回でこの形態で実施します。オンラインでの授業資料の提供方法は、授業のZoomミーティングポイントおよび録画データのリンクのURLをmanaba+Rで公開することとします。公開は期間を限定して行います。

【BCP レベル 3~4 の場合】
 この授業が予定されている曜日時限にオンラインでライブ配信形式で実施します。

*大学の定める配慮事由とは、以下のものをいいます。
(イ)基礎疾患や持病がある等、感染した場合に重症化するリスク(※)の高い学生
(ロ)基礎疾患や持病がある等、感染した場合に重症化するリスク(※)の高い同居家族がいる学生
(ハ)海外との往来制限により、学生本人が渡日・入国できない場合

(※)呼吸疾患、糖尿病、心不全等の国が定める基礎疾患を有する場合

授業外学習の指示

授業が始まったら…
授業前には、できるかぎり、以下の2点をしておくことをお勧めします。
①教科書の該当箇所を一通り読む
②重要なキーワードにラインを引いて、内容をだいたいでいいので理解しておく

授業時には
①六法と教科書を準備する。
②教科書は、授業中に指示されたページを開き、必要と思った個所に、ラインを引くなどをする。

授業後には、以下の3点に取り組んでください。
①授業時のメモを見直して、わからなかったところを教科書で復習しておく
②それでもわからなかったことについては、マナバを通じて、教員に質問する
③授業時に出される「課題」を解いて提出する

「授業前に予習する→授業を受ける→授業後の復習・課題の提出」
をしっかりと行って、単位取得を目指すようにしましょう。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 60

定期試験が実施できない場合は、定期試験に代えて定期試験期間にオンラインで試験を実施する。

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
0

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
40

授業時に出す課題で評価する。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

教科書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
刑法各論 浅田和茂 成文堂 9784792353117

教科書(使用頻度、その他補足)

教科書の使用方法については第1回の授業で説明します。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
刑法の時間 佐久間修・橋本正博編 有斐閣 9784641139459
刑法判例百選Ⅱ 各論第8版 佐伯仁志・橋爪隆 有斐閣 978-4641115514

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

裁判所のページ http://www.courts.go.jp/
(学外から判例や司法統計を検索できるので便利)
e-GOV法令検索 https://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0100/
(小型六法に掲載されていない法令の検索に便利。ただし、授業には六法を持参すること)

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

manaba+R,学生との直接対話,その他(教員より別途指示)

備考

教員連絡先は、コースニュースでお知らせします。

授業に関する質問は、対面で受け付けます。メールでは受け付けません。
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html