授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
30683:[2025 秋セメスター]現代平和論 (G1) § 30684:平和学入門(G1) 2025 秋セメスター 火4 経済学部,理工学部,食マネジメント学部,生命科学部,薬学部,スポーツ健康科学部 中野 克彦 2

キャンパス

BKC

授業施設

コラーニングⅠ 203号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

 平和学を通じて、過去の戦争や紛争の教訓に学び、平和な未来社会をどう構築すべきかを議論します。立命館憲章にある通り、「平和と民主主義」は立命館の教学理念であり、「アジア太平洋地域に位置する日本の学園として、歴史を誠実に見つめ、国際相互理解を通じた多文化共生の学園を確立する」ことを目指してきました。
 第2次世界大戦に日本が参戦した際には、立命館大学は3149名の学生を兵役で休学させ、朝鮮半島出身学生83名のうち、兵役志願を拒否した32名を退学処分にしたという歴史をもっています(その結果、約1千人の先輩が大学に戻ることができませんでした)。二度と戦争の悲劇を繰り返さないという誓いを胸に戦後、立命館大学は再出発し、「国際平和ミュージアム」を開設しました。
 しかし現在、私たちは新たな世界的危機に直面しています。ウクライナ・ロシア戦争にともなう世界大戦勃発の可能性、核の脅威、人種差別、民族差別、ジェノサイド、環境破壊、地球温暖化、パンデミック、資源紛争、飢餓、格差、テロの激化、難民移民問題(2021年には強制移動者は1億人を超えた)などです。こうした状況に対する不作為、放置、無関心が、社会分断をますます深刻化させ、破滅的終末に至る戦争の連鎖に繋がる可能性も否定できません。
 私達はどこで間違ったのでしょうか?危機の構図を解きほぐしながら、世界的な構造的暴力や文化的暴力を打破し、ガンジーやキング牧師が提唱した平和的な社会モデルへの道を根底から考え直そうとするのが、この講義の目的です。
 広島への原爆投下の直後、瓦礫の下に埋もれたサーロー節子さんの耳に「光の見える方向に這っていけ」という呼び声が聞こえたと言います。おかげで彼女は生きのこり、核兵器禁止条約の発効の日を迎えることもできました。今日の世界における私達にとっては、どこに「脱出口」があるのか、どう「脱出」したらよいのか。その「脱出口」に向けて、講師と受講生がともに考えていく、試行錯誤のプロセスを授業方法とします。焦点は下記の通りです。

1.戦争の実相と教訓:紛争・戦争がなぜ起きたのか(なぜ防げなかったのか)。平和的手段による平和、紛争を予防する思考、制度、社会・文明のあり方とは。
2.構造的暴力、文化的暴力の転換:暴力や戦争を肯定する政治・経済・文化体制を批判的に検討する。暴力構造の平和的転換に向けて活動するアクターに学ぶ。
3.大学での学びを平和に結び付けていく。立命館の教学理念「平和と民主主義」を、平和構築に向けた実践として自らのものにしていく。

 講義形式は、対面授業です。2名のゲストスピーカーを招聘し、様々な視点から平和に向けた取り組みと経験をシェアします。質疑応答、課題等へのフィードバックについては、適宜manaba+R等を通じて実施します。

受講生の到達目標

・「人間と自然の共生」が、平和の土台であることを理解する。
・化石燃料の大量使用と自然破壊の関係を理解する。再生不可能資源をめぐる争いが、国際紛争に繋がることを理解する。
・超富裕層と貧困層の格差が、社会分断や民主主義の危機に繋がっていることを理解する。超格差社会を乗り越えるための視点を獲得する。
・「核戦争の危機」にあるいま、「ヒトが戦争を絶滅しないかぎり、戦争のほうがヒトを絶滅させる」可能性を理解する。
・「平和的手段による平和」、つまり「暴力や武力に依存せずに紛争を解決できる」ことを理解する。「非暴力コミュニケーション」のスキルと平和的な人格を身につけることを目指す。

事前に履修しておくことが望まれる科目

他の教養科目では、「戦争の歴史と思想」と「現代の国際関係と日本」などの履修が望まれる。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

第1部 現代の平和をどう築くか:人類史の歩みから考える
現代文明の病理と平和学の挑戦――イノチの危機

・本講義の特徴と解明順序
・「人間と自然の共生」が平和の土台
・積極的平和、消極的平和、直接的暴力、構造的暴力、文化的暴力
【+R 授業】詳細は manaba+R を参照

2

地球と人間の共生:エコサイドから「イノチ輝く未来社会」へ

・宇宙の進化とイノチの尊厳に向けた人類の歴史と現段階。エコサイド
・温暖化と食料・資源紛争
・ワンヘルスの思想
・SDGsの思想
・これからの新たなエコロジー思考とは

3

ポストコロナの社会モデル――世界健康安全保障が意味するもの

・コロナ禍を経て自然と人間の関係性を問い直す
・自然破壊とパンデミックの関係
・今後の温暖化とパンデミック
・超格差社会と感染症
・都市と自然の関係はいかにあるべきか
・「人間、動物、生態系の健康」と平和
・世界健康安全保障
・福祉と医療の保障を求める市民運動
・持続可能な開発(開発とエコロジーの両立は可能か)

4

グローバル・サウスからの問いかけ――新自由主義と超格差社会をどう乗り越えるか

・開発と先住民文化の破壊
・新自由主義による自然破壊、「文化の多様性」の破壊
・搾取と収奪という構造的暴力をいかに転換するか
・中南米における先住民の反新自由主義運動
・世界の先住民女性運動の連帯・協調に学ぶ、未来社会のあり方
・ポストコロナの文明とは

5

帝国に支配された傷を癒す――フィリピン民衆の被害、日本兵のトラウマを見据える
(ゲスト講師① 神直子、ブリッジ・フォー・ピース代表理事) 

・学生時代のフィリピンへのゼミ旅行の体験
・太平洋戦争の犠牲者、被害者の証言を収集する活動
・NPO活動という、人生を変えた経験
・地元、岡崎での国際交流活動によって得たもの

6

第2部 平和構築の今日的課題―核と人類I

・核兵器の歴史
・「核植民地」と構造的暴力
・核を巡る言説:核抑止論と核軍縮

7

核と人類II

・反核運動の歴史
・核軍縮の論理と言説
・グリーナム反核運動からみえてくるもの:軍産複合体批判

8

核と人類III

・ウクライナ戦争と核兵器
・反核運動における日本の位置と役割
・核兵器禁止条約とその背景

9

中東紛争I

・イスラエル/パレスチナの軍事衝突
・中東紛争の歴史背景:構造的暴力、文化的暴力の視点から読み解く

10

中東紛争II

・2001年米同時多発テロ、アフガニスタン戦争、イラク戦争と米国
・米国の覇権主義と中東紛争の淵源

11

第3部 分断される世界――共滅を防ぐ道を探る
 平和に向けた人類の歩み:現状、歴史、教訓

・「人類の共存、共生」に向けた非暴力運動の軌跡
・ガンジーの非暴力不服従とキング牧師の公民権運動
・多文化主義の意義
・なぜ人種差別を克服することが、戦争予防となり得るのか。ユネスコ憲章の理念を考える(「戦争は人の心の中で生まれるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」)
・文化と平和の関係性

12

平和運動の軌跡――戦争違法化に向けて

・2度の世界大戦と戦争違法化の運動
・国連憲章・日本国憲法の世界史的位置
・ベトナム戦争とイラク戦争

13

「宇宙核戦争3.0――その先は勝利か、共滅か」
(ゲスト講師② 藤岡惇)

7度変容した核戦争の姿。ウクライナ戦争。敵基地攻撃能力。核の先制不使用。NATOとアセアン 「核戦争なしに平和な社会に移っていく方策と行動の構築こそが我らの使命」

14

「立命館国際平和ミュージアム」を通じた平和学の進化と展望

平和博物館での学びを通じた平和学習の深化。立命館国際平和ミュージアムの紹介。沿革、理念、意義、見学のポイント。展示を通じて考える平和学の進化(深化)とこれからの展望。

授業実施形態

第1回目~14回目講義:対面で行います。

授業外学習の指示

定期試験は行いません。講義に必要な予習のため、講師があらかじめ指示するテキスト、参考資料のコピーを読み、重要と思った箇所、疑問に思った点などをノートに纏めておくことが必要です。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 0

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

中間レポートと期末レポートを課す。レポートは、所定の期限までにmanaba+Rに提出すること。

成績評価方法(備考)

成績は、出席状況、授業態度、レポート提出をもって、総合的に判断します。また、立命館国際平和ミュージアムの展示見学を通じた学習結果についても、評価に含めます。出席カードにおけるコメントも採点対象となります(日常点評価。なお、講義の趣旨と著しく乖離した不合理な内容のコメント等は減点の対象となるので注意すること)

受講および研究に関するアドバイス

この講義では、論争中のテーマを数多く扱います。レポートについては、①事実をどこまで正確にとらえているか。②論理的に結論が導かれているか、という基準で成績評価を行います。それゆえ講師の見解に必ずしも同調する必要はありません。多様で積極的な議論を重視しながら講義を実施します。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
『世界の現場から 実践SDGs 格差・環境・食糧問題の現実解』 日経サイエンス編集部 日経サイエンス社 978-4296114719
『サピエンス全史 上』 ユヴァル・ハラリ 河出書房新社 978-4309226712
『サピエンス全史 下』 ユヴァル・ハラリ 河出書房新社 978-4309226729
『コロナ危機と未来の選択:パンデミック・格差・気候危機への市民社会の提言』 アジア太平洋資料センター 編 コモンズ 978-4861871696
『命の経済:パンデミック後、新しい世界が始まる』 ジャック・アタリ プレジデント社 978-4833423878
『腸と森の「土」を育てる』 桐村里紗 光文社新書 978-4334045562
エクソダス: アメリカ国境の狂気と祈り 村山祐介 新潮社 978-4103536512
現代フィリピンを知るための61章【第2版】 大野拓司、寺田勇文 明石書店 978-4750330563
『世界に誇る日本国憲法究極の具現化 新生「菜園家族」日本 ―東アジア民衆連帯の要―』 小貫雅男・伊藤恵子 本の泉社 978-4-7807-1945-1
『後世への最大遺物・デンマルク国の話』 内村鑑三 岩波文庫 978-4-0033-1194-3
『新版 きけ わだつみのこえ ―日本戦没学生の手記―』 日本戦没学生記念会 編 岩波文庫 978-4-0033-1571-2
『ジーン・シャープ『独裁体制から民主主義へ』 2023年1月 (NHKテキスト)』 中見真理 NHK出版 978-4142231478
『逆転の大戦争史』 オーナ・ハサウェイほか 文芸春秋 978-4163909127
『迫りくる核リスク:核抑止を解体する』 吉田文彦 岩波新書 978-4004319467
『非核兵器地帯:核なき世界への道筋』 梅林宏道 岩波書店 978-4000245111
『日米同盟・最後のリスク: なぜ米軍のミサイルが日本に配備されるのか』 布施祐仁 創元社 978-4422300603
『核のある世界とこれからを考えるガイドブック』 中村桂子 法律文化社 978-4589040763

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

藤岡惇のHP・・・平和なエコエコノミーへの転換を考える http://eco-economy.ever.jp/wp/ 
伊藤恵子のHP・・・里山研究庵Nomad https://www.satoken-nomad.com/

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

コミュニケーションペーパー,manaba+R,学生との直接対話

備考

【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:https://secure.ritsumei.ac.jp/students/pathways-future/course/curriculum.html/