授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
16051:IR18‐HJ301 専門演習(33) § 16052:IR-GR301 専門演習(33) 2022 春セメスター 木4 国際関係学部 森岡 真史 2

キャンパス

衣笠

授業施設

諒友館RY309号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

ゼミの最終目的は,参加者一人一人が学部での学びの集大成にふさわしい卒業論文を執筆することです。論文のテーマは原則として自由ですが,ゼミ内で文献を読み互いの意見を交えるための共通のテーマとして,2022年度のゼミでは,以下の問題について考える予定です。
 (1) 経済の成長を決める要因は何か? GDP(国内総生産)の伸び率で測られた世界各国の経済成長率には,国(地域)や時代ごとに,大きな違いが見られます。世界の国々の中には,高い率での経済成長をある期間にわたって続けた結果として国民の平均所得が大きく上昇した国々と,そのような成長をまだ経験していない国々とが存在します。今から一世紀前には,経済成長を果たしたのは欧米諸国や日本など少数の国に限られていました。しかし,第二次大戦後,かつて(半)植民地であった国々の一部は,めざましい経済成長を達成し,あるいは現在も成長しつつあります(アジアNIEsや中国・インドなどの新興諸国)。その一方で,なお多くの発展途上国が低い所得水準にとどまっています。経済成長とはどんな条件があれば可能となるのでしょうか。なぜある国では所得が継続的に増大し,他の国ではそのような増大が生じないのでしょうか。
  歴史的にみると,先んじて経済成長を達成した先進諸国の成長率は21世紀以降全体として低下傾向にあります。日本は,1950年代半ばから1980年代末まで高い率で成長を続けましたが,1990年代以降の年平均成長率は1%足らずです。さらに,30年にわたって高成長を続けてきた中国でも,減速のきざしが顕著となってきました。このような成長率の長期的低下はなぜ生じているのでしょうか。また成長率の低下は,高成長を前提として構築された社会経済制度にどのような変更を迫るでしょうか。
 (2) 人々がより高い所得を求める限り,私たちはさらなる経済成長を追求すべきか? 経済成長をめぐるグローバルな分岐と減速は,2つの傾向を生み出しています。先進国では,経済成長の減速を背景に,人間の幸福をGDPの成長だけではなく,人間的な働き方,健康,住居,安全,ワーク・ライフ・バランス,社会参加などより多様な角度からとらえた「幸福度」と呼ばれる指標を作成し,これを政策立案に活用していこうという動きが活発になってきました。OECDの「より良い暮らし指標」の作成はその代表的な事例です。このような幸福度作成の動きは,経済成長優先のこれまでの政策のあり方に何らかの変化をもたらすでしょうか。
  経済成長に限界があることの認識に立った新たな方向の模索と並行して,現在の世界では,所得の差による分断が広がり,より高い所得を求める人々の移動が世界各地で大きな摩擦を引き起こしています。世界からランダムに2人の大人を選んだとき,両者の差の半分は出生国の平均所得および親の所得の差で説明できるという推計も存在します。先進国では近年,成長率の原則に伴って貧困問題が再び注目を集め,所得階層の固定化への懸念が高まっています。また,より発展途上国からの移住者の並を防ぐため,入国に対する制限や物理的障壁が強化され,移民を制限・排斥する言説が影響力を増しつつあります。このように所得の格差が深刻な問題であるとすれば,各国はやはり経済成長によって所得の増大を可能な限り追求すべきなのでしょうか。

受講生の到達目標

 (1)社会経済の諸問題について,広く文献・資料にあたり,事実と論理に基づいて分析的・批判的・多面的に考察する力を修得する。
 (2)共通テーマに関する集団的な発表・質疑・討論に積極的に参加する姿勢を身につける。
 (3)自分自身の個別的な研究課題に沿って継続的・計画的に研究を進め,一定の水準をもったタームペーパーと卒論を完成させる。

事前に履修しておくことが望まれる科目

経済理論の知識は必須の前提とはしません。経済系の授業をとったことはなくても,テーマには関心があるという人も歓迎します。ゼミの参加者には,①旺盛な知的好奇心をもつこと,②先入観を捨てて頭を柔らかくする(一つの物事を多くの側面からとらえる)こと,③さまざまな立場・状況におかれた人間の思考や行動について想像力・理解力をもつこと,④本をしっかり読むこと,⑤恥ずかしがらずに発言すること.⑤論理的で正確な文章を書く訓練をすること,を求めます。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1~15

ゼミの運営方法

*3回生と4回生は合同で行います。通常のゼミではテキストを決めて,グループまたは個人で発表を行い,全員で討論します。また文献の講読を前提として討論のみを行うこともあります。
*manabaを活用し,掲示板上で発表者以外にも事前にコメントの書き込みを行ってもらいます。
*当ゼミでは,論文作成を重視しています。ゼミ参加者は,上記のゼミテーマに関連づけながら,タームペーパー・卒論執筆に向けたより具体的な個人テーマを自由に設定します。テキスト輪読と並行して,各セメスターの半ば(5月末頃/10月末頃)にタームペーパーの構想(テーマ,取り扱う問題,アプローチの方法,利用する資料など)を,次いで学部締め切りの二週間程度前にドラフトの提出を求めます。提出された構想とドラフトは,可能な限り,添削のうえコメントを付して返却します。このサイクルを繰り返しながら,構成力・文章作成力を高め,学びの集大成にふさわしい卒業論文の執筆につなげます。
*感染拡大の状況に応じて,対面授業あるいはZoomを用いたリアルタイルムWEB授業の形式で行います。

授業実施形態

BCPレベルに応じて教員から説明します

授業外学習の指示

・文献輪読に際して,発表者(発表グループ)となった場合にはレジメ・資料の作成に取り組む。発表班以外の人は文献をしっかり読み,疑問点や意見をManaba+Rに事前に提出する。
・設定された論点や他者の発表へのコメント・意見をManaba+R上に所定の期日までに提出する。
・授業内での個人テーマに関する発表に向けて計画的に準備を進め,進行状況の報告を行う。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
40

タームペーパー

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
60

出席を前提として,ゼミ内での発言や課題(グループ発表への参加,タームペーパー構想発表,予定論点への自分の意見の書き込みなど)の遂行状況を総合的に評価します。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

ゼミの議論では歴史の話がよく出てきます。高校時代(や大学入学後)に近現代史をあまりやらなかった人は,おおまかな流れだけでもおさえるようにしておいて下さい。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

下記の参考・推薦文献の中から,ゼミ生と相談のうえ適宜選択します。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
大不平等:エレファントカーブが予測する未来 B. ミラノヴィッチ みすず書房 978-4622086130 2017年
大脱出——健康,お金,格差の起源 A. ディートン みすず書房 978-4622078708 2014年
貧乏人の経済学:もういちど貧困問題を根っこから考える バナジー&デュフロ みすず書房 978-4622076513 2012年
21世紀の不平等 アトキンソン 東洋経済新報社 978-4492314708 2015年
人類の幸福論 キャロル・グラハム 西村書店 978-4890137763 2017年
幸福度をはかる経済学 ブルーノ・フライ NTT出版 978-4757122734 2012年
OECD幸福度白書:より良い暮らし指標 OECD(編) 明石書店 978-4750337173 2013年
主観的幸福を測る————OECDガイドライン OECD(編) 明石書店 978-4750342382 2016年
市場を創る:バザールからネット取引まで ジョン・マクミラン NTT 出版 978-4757121270 2007年
経済統計でみる世界経済2000 年史 アンガス・マディソン 柏書房 4760126201 2004年
「豊かさ」の誕生:成長と発展の文明史 バーンスタイン 日本経済新聞社 978-4532197681 2006年
最後の資本主義 ロバート・ライシュ 東洋経済新報社 978-4492444405 2016年
それをお金で買いますか マイケル・サンデル 早川書房 978-4150504199 2012年

参考書(使用頻度、その他補足)

参考になるwwwページ

OECD より良い暮らし指標 http://www.oecd.org/tokyo/statistics/aboutbli.htm
World Happiness Report 2018 https://s3.amazonaws.com/happiness-report/2018/WHR_web.pdf

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

学生との直接対話,その他(教員より別途指示)

備考

過去の卒業研究(卒業論文)テーマ一例
「欲望の理由――現代社会における欲望発生論の考察」(2011) 「途上国開発におけるICT活用の意義と現状」(2012) 「デンマークの労働市場政策――2008年の世界金融経済危機と政策の歩み―」(2013) 「日本人女性の洋装化はなぜ男性よりも遅れたか――欧米における衣服近代化との比較の視点から」(2013) 「貧困削減に資する投資政策−−東アジアの経験から」(2014) 「アメリカの肥満と貧困—―住宅環境・食糧供給・教育の関連性とその影響」(2015)「CSRの展開と株式投資:「責任ある投資」が日本企業に与える影響」(2016)「タイにおける都市化と国内格差に関する課題」(2017)。「台湾の女性就労―結婚・出産期と中高年層における労働力率の日韓との比較」(2018)。これらはいずれも父母教育後援会の卒論部門(2017年度から学部長表彰制度卒論部門)で優秀賞あるいは教育賞を受賞した論文です。
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html