| 授業科目名 | 年度 | 学期 | 開講曜日・時限 | 学部・研究科 | 全担当教員 | 単位数 |
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| 34794:文化経済学(E) | 2024 | 春セメスター | 月4 | 経済学部 | 伊藤 恵子 | 2 |
キャンパス
授業施設
授業で利用する言語
授業の概要と方法
文化国家といふ夢ありき
はるかなる焦土の上にありし青空
馬場あき子(1928~)
長く悲惨な戦争の時代への痛切な反省の上に、平和な文化国の建設を新たな国民的目標に掲げ、歩みはじめた新生日本。
戦後78年を経た今、立ち止まって振り返れば、その目標はいつしか「経済成長」に置き換わり、私たちは、当初の崇高な理念と突きぬけるような希望からあまりにもかけ離れ、混迷と閉塞の時代に生きていることに気づかされる。
1990年代初頭、米ソ二大陣営による冷戦構造が崩壊し、アメリカ単独覇権体制が成立したのも束の間、旧来の伝統的大国に加え、新興大国が入り乱れる地球規模での新たな多元的覇権争奪の時代が幕を開けた。中でも中国の急速な経済的台頭にともない、米中二超大国間の覇権争いがいよいよ鮮明になり、周縁諸国を巻き込みながら、軍事的緊張が醸成されている。
飽くなき資本の自己増殖運動の果てに、今や富を生み出す主役は、かつての耐久消費財から情報・金融に移行した。AIや5Gによるビッグデータを駆使しての市場コントロール、自動運転車と住宅設備や家電との連結(IoT)に基づく、極度に人工化された巨大都市スマートシティの開発。それらを支える最先端の科学技術と市場をめぐる覇権の攻防は、激しさを増している。
こうした「経済の金融化」の時代に、指数関数的に増大する資本と従来型の消費との深刻な矛盾を解消すべく、刹那的「体験型」消費形態(デヴィッド・ハーヴェイ)として、あるゆる文化・芸術、スポーツの極端な商品化、イベント化、観光の産業化が大々的に促進されていく。このような刹那的「体験型」消費形態は、経済成長の新たな強力な牽引役を担っていく。こうした中、デジタル技術の進展とも相俟って、個々人レベルでの思考は、いっそう断片化、刹那化を余儀なくされていくのである。果たしてこの状況下で、どんな「文化」が生まれるというのであろうか。
熾烈なグローバル市場競争の渦の中、経済の金融化・情報化の果てに、世界の社会・経済の矛盾は、いよいよあらわになってきている。広がる格差のもと高まる不満と、各地に拡大する暴力と憎しみの連鎖。物質的「豊かさ」を享受してきたはずのEUやアメリカさえも揺れている。わが国とて例外ではない。
一方、地球温暖化による気候変動がもたらす自然災害は、年々その猛威の度を増し、人々の暮らしを脅かすまでになっている。そして、2011年わが国で引き起こされた3・11福島原発事故による未曾有の事態は、かけがえのないふるさとの生活と文化を破壊した。これらは、資源やエネルギーの有限性、そして何よりも、自然と人間の関係性を厳しく突きつけてくる。
2020年新型コロナウイルス・パンデミックは、市場原理至上主義の苛酷なグローバル経済が世界にもたらしてきた、こうした積年の深刻な複合的矛盾を一気に露呈させたと言える。
今、私たちは、18世紀イギリス産業革命以来、自明のものとされてきた大量生産・大量消費・大量廃棄の「拡大経済」を基調とするこれまでの生産と暮らしのあり方、巨大都市集中型の国土構造を根本から考え直すよう迫られている。
文化。それは根源的には、大地に根ざした民衆の日常普段のなりわいから育まれるものである。人々が互いに協力し、土地土地の自然に働きかけ、衣食住の材を生み出し、日々の暮らしを営み、次の世代を産み育て、いのちをつないでいく。この地球上の多様な風土に合わせ、人々が工夫し懸命に生きる中で、長い歴史をかけて培われてきたもの。それこそが、いのちをめぐる大地と人間の合作による、かけがえのない結晶としての民衆文化である。
この授業では、人間の生きる原点に立ち返り、人々の生産と生活の具体的な場である「地域」を、文化を育む根源的揺籃と捉え、人間社会の基礎代謝をミクロのレベルで直接的に担うこの基礎的「地域」を基軸に、私たちが今日直面する文化的課題を浮き彫りにするとともに、めざすべき新たな未来社会とそれを基盤に成立する文化像を展望したい。
21世紀型「新大国主義」の台頭とも言うべき新たな歴史的段階に突入し、熾烈なグローバル市場経済に晒され、風土に根ざした民衆の生活基盤そのものが根底から揺らぎ、文化の多様性の喪失と画一化・産業化がますます進行するこの世界にあって、それに対峙し、如何に自然循環型共生の民衆のライフスタイルと文化を創造的に構築していくのか。
それはつまり、戦後78年を経て、重大な岐路に立たされている今、「平和主義」、「基本的人権(生存権を含む)の尊重」、「主権在民」の三原則を基調とする日本国憲法に凝縮された、まさに根源の“いのちの思想”を今日の現実世界に如何に具現化していくのか、私たち一人ひとりが自己に向き合い、自らの生き方を探る契機ともなるであろう。
日本の私たち自身の足もとからのこの変革への努力は、分断と対立を深める今日の東アジア世界にあって、互いの暮らしのあり方・文化の尊重と学び合いの上に、そこに生きる人々との真の“民衆連帯”にもつながっていくにちがいない。
具体的には、伊藤がモンゴル遊牧地域と日本の農山村で取り組んできた調査・研究に基づき、展開していく。
※ 授業の方法
文献資料および映像資料に依拠し、その解説を通じて理解と考察を深めていきます。
毎回の授業時間の終わりにコミュニケーションペーパーを書いてもらい、次の授業の冒頭でフィードバックを行います。
授業の進度に沿ってレポートを課し、manaba+Rに提出してもらいます。
受講生の到達目標
②上記①をふまえ、グローバル市場原理のもとで商品化・巨大化を遂げてきた現代の「文化産業」、およびそれを成長戦略として推進してきた経済政策について、考察・評価する問題意識を涵養する。
③混迷する海図なき今日の世界にあって、生きる希望となる21世紀にふさわしい私たち自身の新たな未来社会像、その基盤の上に育まれる文化とはどのようなものであるのかを、社会の現実から出発して、自らの頭で洞察し、創造していく出発点に立つ。
事前に履修しておくことが望まれる科目
授業スケジュール
| 授業回数/ 担当教員(複数担当の場合) |
テーマ |
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| キーワード・文献・補足事項等 | |
| 第1回 |
テーマ①私たちはどんな時代に生きているのか
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授業の趣旨と進め方
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| 第2回 | 世界的複合危機、混迷の時代 ―「成長戦略」の果てに― |
“浪費が美徳”の「拡大経済」 福島原発事故と地域の暮らし・伝統文化の破壊 世界的複合危機 ~気候変動・パンデミック・ウクライナ戦争~ 「経済」と地球環境保全・感染拡大防止・平和とのジレンマ
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| 第3回 |
テーマ②人間の生きる基盤を見つめ直す
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20世紀、遊牧の集団化とその行き詰まり 家族小経営と伝統的地域共同体の復活 |
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| 第4回 |
文化の根源的揺籃としての自然・家族・地域(2)
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主体性の回復と基礎的「地域」の自治 遊牧民協同組合ホルショー |
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| 第5回 |
文化の根源的揺籃としての自然・家族・地域(3)
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大地に根ざした生産と暮らしと民衆文化の体系 |
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| 第6回 |
文化の根源的揺籃としての自然・家族・地域(4)
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風土に調和した地域づくり(伝統的手工芸の再興、独自の教育・文化・芸術・医療の模索) |
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| 第7回 |
テーマ③小さな「地域」の視点からグローバリゼーション下の生活文化を問う
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米ソ二大対立から多元的覇権争奪の時代へ 市場経済への急激な移行 |
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| 第8回 |
地域の“自立と共生”を切り崩すグローバル市場経済(2)
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自然に適合した伝統的遊牧の軽視 外資参入と地下資源の乱開発 地方の衰退と人口の首都一極集中 生み出される“貧困層”と格差拡大 |
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| 第9回 |
地域の“自立と共生”を切り崩すグローバル市場経済(3)
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大国追従の市場経済第一主義政策の破綻 揺らぐ平和と民衆文化の地域基盤 |
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| 第10回 |
巨大化の道に抗する先駆的思想と実践(1)
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『スモール・イズ・ビューティフル』(1973) 中間技術・適正技術 環境雑誌『リサージェンス』 ホリスティック・サイエンス Soil,Soul,Society |
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| 第11回 |
巨大化の道に抗する先駆的思想と実践(2)
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伝統的手仕事を基礎にしたスワデーシ(地域経済)の再生 象徴としてのチャルカー(紡ぎ車) 村落共同体の自立と自治 真の文明 大規模開発プロジェクトの歪み 家族小経営の再評価 |
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| 第12回 |
テーマ④わが国の現実を見つめ、平和と文化の地域基盤を探る
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国土の産業構造の劇的変化 巨大都市の出現と農山漁村の過疎高齢化 『日本列島改造論』(1972) 衰退する森と海(湖)を結ぶ流域地域圏 |
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| 第13回 | 今問われる人間の社会的生存形態 ―近代と賃金労働者― |
18世紀イギリス産業革命 人間と生産手段の分離 分業化と自己疎外 今日における雇用の不安定化、若者の過労死・過労自殺 |
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| 第14回 |
21世紀、近代を超える新しい民衆文化創造の基盤を築く
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「菜園家族」社会構想 労働時間の短縮とワークシェアリング 現代賃金労働者と生産手段との「再結合」 CFP複合社会 森と海(湖)を結ぶ流域地域圏の再生 |
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| 第15回 | まとめと展望 |
人間本来の自由な時間を取り戻す 自然と人間の再融合と文化の再生 |
授業実施形態
第2回以降は、原則、教室での対面授業を行う予定です。必要に応じて、メディア授業(オンデマンド型またはZoomによるライブ配信型)を行う場合があります。その際は、事前にmanaba+Rでお知らせします。
対面授業の同時配信・録画配信はありません。
授業外学習の指示
成績評価方法
| 種別 | 割合(%) | 評価基準等 |
|---|---|---|
| 定期試験(筆記) | 0 | |
| レポート試験 (統一締切日を締切とするレポート) |
0 | |
| 上記以外の試験・レポート、平常点評価 (日常的な授業における取組状況の評価) |
100 | 毎回の授業時間の終わりに、コミュニケーションペーパーを書いてもらいます。
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成績評価方法(備考)
一旦、manaba+Rに提出したレポート等は、原則として再提出を認めません。
友人たちと意見を交流してレポートを作成することは望ましいことですが、自己の意見とオリジナリティを明確にしたレポート等を作成する必要があります。
他の受講生のレポート等からの盗作、ウイキペディアなどの検索サイトからの剽窃、あるいは、自己の見解や独自性の乏しい同一レポート等を複数名が提出することは、不正行為となります。その場合は、関係者全員が失格となります。
また、Chat GPT に頼らず、自分の頭で考え、自分なりの言葉で書くことを大切にして下さい。
受講および研究に関するアドバイス
普段から授業に参加し、自分なりの思索を深め、レポートに結実させていって下さい。
教科書
| 書名 | 著者 | 出版社 | ISBNコード | 備考 |
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| 世界に誇る日本国憲法究極の具現化 新生「菜園家族」日本 ―東アジア民衆連帯の要― | 小貫雅男・伊藤恵子 | 本の泉社 | ISBN:978-4-7807-1945-1 | 2019年 |
| 気候変動とパンデミックの時代 生命系の未来社会論 ―抗市場免疫の「菜園家族」が近代を根底から覆す― | 小貫雅男・伊藤恵子 | 御茶の水書房 | ISBN:978-4-275-02142-7 | 2021年 |
教科書(使用頻度、その他補足)
参考書
| 書名 | 著者 | 出版社 | ISBNコード | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| スモール・イズ・ビューティフル ―人間中心の経済学― | E・F・シューマッハー | 講談社学術文庫 | ISBN:978-4-06-158730-4 | 1986年 |
| 君あり、故に我あり ―依存の宣言― | サティシュ・クマール | 講談社学術文庫 | ISBN:978-4-06-159706-8 | 2005年 |
| 帰りなん、いざ豊饒の大地と海に ―“平和なエコエコノミー”の創造・再論― | 藤岡惇 | 立命館大学経済学会 | 『立命館経済学』第65巻特別号13、2016年9月 | |
| 始まっている未来 ―新しい経済学は可能か― | 宇沢弘文・内橋克人 | 岩波書店 | ISBN:978-4-00-024450-3 | 2009年 |
| 日本の食生活全集(全50巻) | 農文協各県編集委員会 編 | 農山漁村文化協会 | 1984~1993年 |
参考書(使用頻度、その他補足)
参考になるwwwページ
藤岡惇先生(立命館大学経済学部名誉教授)のHP・・・平和なエコエコノミーへの転換を考える http://eco-economy.ever.jp/wp/
授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法
備考
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html