授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
16043:IR18‐HJ301 専門演習(22) § 16044:IR-GR301 専門演習(22) 2022 春セメスター 水4 国際関係学部 川村 仁子 2

キャンパス

衣笠

授業施設

恒心館KS204号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

このゼミのテーマは「グローバル・リスクと国際秩序」です。社会の分断や科学・技術の発展に起因するグローバル・リスクと国際秩序の関係に焦点を当て、多角的に検討することを目的としています。
現在、気候変動やCOVID-19のパンデミックをはじめ、世界は多様なリスクにさらされ、これまで人間社会の中で築き上げられてきた人権やデモクラシー、リベラリズム、国民国家のような諸価値および諸制度に揺らぎが生じています。このような状況に対して、既存の政治勢力が自己刷新を試みる一方で、新たな政治勢力(ナショナリズム運動、ポピュリスト政党など)やテロを含む暴力的な抵抗運動が国内外に拡大しつつあります。また、社会のデジタル化や、AI、宇宙技術、ナノテクノロジー、遺伝子工学といった科学・技術の発達は、人類の抱える問題を解決する手段となり、新たな社会的・経済的利益をもたらす可能性がある一方で、人間社会が築き上げてきた価値観や人間の安全を直接的に脅かすリスクにもなりえます。近年、科学・技術の倫理的・法制度的・社会的課題(ELSI)への注目が高まっているように、このことは自然科学における科学・技術のさらなる発展のみに解決を見出すべき課題ではなく、科学・技術を私たちの社会がいかに受容していくかという人文科学・社会科学の課題としても取り扱う必要があります。
そこでこのゼミでは、私たちが直面している紛争やテロ、移民問題、社会の分断、環境問題、科学・技術、COVID-19といったリスクを「グローバル・リスク」として捉え、①どのような「グローバル・リスク」が存在するのか、また、②ナショナル、リージョナル、グローバルな社会にどのような影響を与えているのか、あるいは与えうるのか、そして、③それらにどのように対応すべきかを社会学や政治学、法学の思想や理論、時には倫理学や哲学を国際関係と関連づけて学びます。グローバル・リスクによって私たちの認識はどのように変わり、それらは社会や政治などに対してどのような影響を与えている(あるいは与えうる)のか、そして、今後どのようなネットワークや制度、規範が必要となるのかについて、みなさんと一緒に考えていきたいと思います。
ゼミでの自由なディスカッションが、これまで日常生活や授業のなかで当たり前のことだとみなしてきたけれども、立ち止まって考えてみると実はよく分からないことをもう一度考え直してみる機会になれば良いと思います。このゼミが、身近なテーマから大きなテーマまで、社会の表に現れている現象そのものだけではなく、それらがいかに現れたのかという「本質」について一緒に考えていく思考実験の場になればと期待します。そして、ゼミでの活動や卒業研究を通じて自ら課題を見つけ、課題の解決策を考え、それを検証することができるようになることを目指します。

受講生の到達目標

1. 何事に対しても自分の頭で考え、勇気を持って自分の意見を伝える力を身につける。
2. ゼミを通して、学生は自らのテーマについての知識を深め、情報を発信する力を身につける。
3. 国際関係学の背景にある思想・理論をよく理解し、現代社会に対する洞察力を養う。

事前に履修しておくことが望まれる科目

政治学、法学、社会学、国際関係学、国際政治学、国際法、国際行政学のうち、いずれかを受講していることが望ましいですが、受講していなくても特に問題はありません。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1~15

ゼミの運営方法

ゼミは3回生、4回生合同で行います。ゼミの運営方法は、毎年学生と一緒に考えています。基本的には、1年目の春学期では、グローバル・リスクに関わるテキストを一緒に選び、輪読します。輪読では、その日の担当者に報告してもらった後で、みんなでディスカッションを行います。1年目の秋学期では、主にオープンゼミナールへの参加を含め、各学生が関心のあるテーマを選び、春学期に学んだことと関連付けながら自らの研究を進めます。2年目は、1年目で行ったことをさらに発展させ、国際関係に関わる思想・理論への理解を深めるとともに、卒業論文の執筆を行います。
 ゼミ研修は、学生と相談した上で実施するかどうかを決定します(ただし、COVID-19の状況次第では、実施を希望しても中止になる可能性があります)。2017年度は倉敷で歴史と芸術の社会的な意義に関する講義を受け、大原美術館が行う若手芸術家支援プログラムと地域振興についてのインタビューおよび芸術鑑賞を行いました。また、直島も訪れ、インタビューや芸術鑑賞を通して、人間の想像力に訴えかけることによって人間と自然、人間と社会の関係の多様性を認識させ、既存の思考を再構築するきっかけとなる芸術の社会的役割についての理解を深めました。 2018年度は、「東アジア文化都市」の開催地の石川県金沢市の金沢21世紀美術館を訪れ、アジアの歴史や文化と結び付きながら、伝統とグローバル化および技術革新の間で「人間はどこに向かうのか」という普遍的な問いを投げ掛ける作品と、コロンビア大学デスラボによる「死を民主化せよ」という企画を鑑賞し、芸術の公共性について考察しました。また、岐阜県白川村では、世界遺産申請当時の担当者にインタビューを行いながら解説を聞くことで、地域の特色を観光資源として活用する事や観光地の国際化について検討しました。2019年度は日韓関係を歴史と文化の側面から再認識するためソウルを訪れ、史跡や歴史博物館、通仁市場、国立現代美術館などで、韓国の視点からどのように日韓の歴史が捉えられているのか、また、韓国社会の格差、家族、アイデンティティ、幸福観について学びました。

授業実施形態

【BCPレベルが1もしくは2の場合】
・全授業回数の1/2を超える回数の授業を対面形式で行い、残りの授業回についてはWeb授業を行います。
・担当教員の連絡先は初回授業までにmanaba+Rコース内に記載します。
・学期の途中にBCPレベルが3以上に変更になった場合でも、対面授業を継続する場合があります。
・下記の条件に該当し対面授業に参加できない学生がいた場合は、すべての授業回でWebフォローを行います。該当する学生は、初回授業までを目途に担当教員に申し出てください。

[Webフォロー対象となる条件]
①基礎疾患や持病がある等、感染した場合に重症化するリスク(※)の高い学生
②基礎疾患や持病がある等、感染した場合に重症化するリスク(※)の高い同居家族がいる学生
③海外との往来制限により、学生本人が渡日・入国できない場合
(※) 呼吸器疾患、糖尿病、心不全等の国が定める基礎疾患を有する場合

【BCPレベルが3もしくは4の場合の場合】
・原則Web授業となりますが、対面授業を行う場合があるので、manaba+Rのコース内を確認してください。

※立命館大学のBCPレベルについては以下URL先の1. 立命館大学における新型コロナウイルス感染症に関する対策を参照。
http://www.ritsumei.ac.jp/news/detail/?id=1679

授業外学習の指示

基本的な授業外学習としては、以下の3点をあげます。
①事前にテキストの指定箇所を読み、自分が疑問に思った点や興味を持った点、みんなでディスカッションしたい点を整理してくること、
②ゼミで取り上げたテーマについて様々な視座からから自分の頭で考えてみること、
③ゼミでのディスカッションの内容を自分のテーマにつなげて研究を行うこと。
その他については、イントロダクションおよび各回の授業のなか、またはmanabaの掲示板で指示します。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
40

タームペーパー

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
60

1. ゼミへの積極的な参加(20%)
2. 報告・レジュメ(30%)
3.ディスカッションでのコメント(10%)
* ゼミへの積極的な参加、自ら選んだテーマへの理解(歴史的背景、思想、理論など)、タームペーパーなどで評価します。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

大学は自ら考え行動する場所です。皆さんには自分がやりたいことを実現するだけの力があり、望めばその力を試すことができるでしょう。しかし、何もしなければ大学生活はあっという間に過ぎてしまいます。「学生」でいるあいだは、自分の能力を見限らず、様々なことに興味をもち、挑戦してください。このゼミは、知的探究心のおもむくままに、学問と実験に打ち込むことができる空間にしたいと思います。様々な議論に心弾ませながら、共に「真理の森」を彷徨いましょう。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

 学生の意見を聞いて一緒に選定します。ちなみに、2015年春学期はクラウス・リーゼンフーバー『西洋古代・中世哲学史』(平凡社、2000年)、秋学期は横田洋三編『国際社会と法』(有斐閣、2010年)、シャルル・ド・ヴィシェール『国際法における理論と現実』(成文堂、2007年)第1章、2016年春学期はハンナ・アーレント『人間の条件』(筑摩書房、1994年)、秋学期は『グローバル・コモンズ』(岩波書店、2015年)、2017年春学期はジャン・ジャック・ルソー『人間不平等起源論』(講談社、2016年)、2018年春学期は斎藤純一『公共性』(岩波書店、2000年)、秋学期は持永大・野村正康・土屋大洋『サイバー空間を支配する者』(日本経済新聞社、2018年)、2019年春学期はポール・ブルーム『反共感論』(白揚社、2018年)、2021年春学期はアミン・アマルーフ『アイデンティティが人を殺す』(筑摩書房、2019年)をテキストとしました。

参考書

参考書(使用頻度、その他補足)

授業のなか、あるいはmanabaで適宜紹介します。

参考になるwwwページ

授業のなか、あるいはmanabaで適宜紹介します。

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

学生との直接対話,その他(教員より別途指示)

備考

過去の卒業研究(卒業論文)テーマ一例
「人工知能の発展と人間の条件の変容」
「Autonomieを探して ~ライシテによる自律的個人の創造~」
「先端化学技術をめぐるグローバル・ガバナンス~AIロボットを例として~」
「AI時代におけるベーシックインカムの有用性—『食うために働くべからず』の実現のために—」
「社会と新技術の関係 〜遺伝子組み換え作物、ゲノム編集作物から考える〜」
「外交における女性の活躍の意義 ―「認識」の重要性と「女性」の戦略的活用―」
「国際関係から考える人間の想像力」
「進化論から考える社会システム理論」
「わたしという人間の終わり方 〜死と芸術〜」
「国際社会における宗教の位置づけ—「政教分離・論理・科学」の時代において「非科学的・非社会的」でない宗教—」
「現代の日本のパブリック・ディプロマシーにおける民間が果たす役割の重要性について」など
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html