授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
15880:IR18‐AJ102 政治学(R) § 15881:IR-AR102 政治学(R) 2024 秋セメスター 水4 国際関係学部 田中 聡 2

キャンパス

衣笠

授業施設

恒心館KS209号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

「政治」とは何か。一般に政治と聞けば議会や選挙を想像し、我々の生活からは少し遠い存在に感じるかもしれません。それらは政治の重要な要素ではありますが、一方で政治はより広範に我々の日々の生活に密接するものでもあります。政治とは「諸価値の権威的配分」であると定義されます(イーストン 1976)。人が一定数集まり社会を築くとき、そこには必ず「権力」が生まれます。社会の構成員は誰か、社会を維持・運営するコストを誰がどのくらい負担するのか、社会の持つ資源を誰にどのくらい分配するのか、そしてそれらを誰がどのように意思決定するのか。権力は社会に秩序をもたらす上で必要不可欠である一方で、それが「正しくない」形で行使されれば社会に害をもたらします。そこで、より良い社会を築くために、権力が現状どのような形で行使されているかを分析し、それをより「正しい」形で行使させるために必要な仕組みを考察することが必要です。政治学ではそのような問題を考えます。
 これら「権力」をめぐる問題は、例えば紛争、貧困、難民問題など、今日の重要な国際問題に取り組む上でも避けては通れません。なぜ国家/政治家は「戦争をする」という選択を行うのか、なぜ社会の資源が一部の人々へと有利な形で分配されるのか、なぜ一部の人々が社会の構成員と見なされず排外主義の対象となるのか、そして、それらの意思決定を行う政治家がなぜ権力の座に居続けることができるのか。これらの社会課題の背後には「政治」が存在します。本コースでは、政治学の基本的な問い、概念、理論、研究蓄積を概観することを通して、以上のような社会現象を「政治学」的に分析することの基礎を学びます。

【授業の進め方】
本コースは原則、対面で授業を行います。授業は配布するレジュメに沿って講義を行う形で進めます。また毎回の授業の最後に受講生にはその日の授業テーマについて理解したこと、考えたことをManaba+R上にコメントしてもらいます。


イーストン、デビッド. (山川雄巳訳). 1976. 『政治体系:政治学の状態への探求』ぺりかん社.

受講生の到達目標

・政治学の基本的な問い、概念、理論、研究蓄積を理解し、説明できる。
・政治学で議論される問題について、自分自身の意見を持ち、それを論理的に述べることができる。
・自分自身が関心を持つ社会現象、社会課題の「政治」的な側面について分析し、説明できる。

事前に履修しておくことが望まれる科目

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
第1回

イントロダクション

政治とは何か。この授業では、他の学問分野とも比較しながら、政治学とは何について考える学問かを考えます。その最も重要な概念の一つ「権力」について考察する中で、社会現象を「政治学」的に分析するとはどのようなことかを考えます。

第2回

国家

国家とは何か。国家は現在、地球上のほぼ全ての領土を覆い、最も主要な政治の単位となっています。どのようにして国家は生まれ、地球規模に広がったのか、そして、なぜ国家が主要な統治のあり方となったのか。あらゆる社会課題を考える上で前提となる国家について、これまで行われてきた研究を概観します。

第3回

ナショナリズム

ナショナリズムとは、国家を構成する人々の間での共同体意識を指し、時に国家間の戦争や、既存の国家からの分離独立運動、または、移民に対する排外主義などを引き起こす原動力となります。この授業ではナショナリズムとは何か、それはいかにして生まれ、いかなる場合に政治的な原動力を持つのかについて考えます。

第4回

民主主義

民主主義とは自明なようで、大変理解が難しい概念です。世界中の多くの国が民主主義を統治の原則として掲げる一方、現在それはさまざまな危機にも直面しています。この授業では、民主主義がどのような歴史的背景を受けて発展を遂げてきたのかを振り返りながら、民主主義とは何を指す概念なのかについて理解を深めます。その上で、国家が民主主義体制へと移行(民主化)する条件について考えます。

第5回

政治制度

政治がどのように行われるかは、その社会が持つ政治制度によって大きく規定されます。いかなる手続きで権力を担う人を選ぶのか、どのような権限を選ばれた人へと与えるのか。それらルールの違いを踏まえずに、異なる国や社会間での政治のあり方の違いを単純に比較することはできません。この授業では特に執政制度、議会制度、地方自治制度を扱い、政治制度が政治のあり方に及ぼす影響を考えます。

第6回

政党

政党はある共通の政治理念の下に集まる政治集団を指し、現代の民主主義において重要な役割を果たします。この授業では、政党がどのように組織され、政治においてどのような役割を果たすのか、また、二大政党制や多党制などの政党システムはどのような条件によって規定され、どのような時に安定するのかを考えます。

第7回

選挙

最近では選挙での投票率の低さが指摘され、特に若者へと投票に行くよう呼びかける動きが見られます。なぜ選挙に行かないといけないのでしょうか。投票率が上がることで何か政治は変わるのでしょうか。この授業では何が人々の投票行動へと影響を与えるのか、逆に、人々の投票行動がどのように政治へと影響するのかを考えます。

第8回

市民社会

人々にとって選挙だけが政治へと関わる方法でしょうか。民主主義体制においては国民一人ひとりが「主権」を持つ有権者であるとされますが、そうした有権者であっても選挙が行われる時以外、政治へと自分たちの意見を反映させる方法はないのでしょうか。この授業では、選挙以外の形で有権者の民意が政治へと反映される方法はあるのかを考えます。

第9回

権威主義

権威主義とは非民主的な統治体制を指します。権威主義国家では、一見すると、絶対的な権力を持つ独裁者が思うがままに統治しているように思えますが、近年の政治学の研究では、独裁者もその地位を守るための「政治」にさらされており、その行方が権威主義体制の存続・崩壊につながると考えられています。この授業では、それらの議論を概観することで、独裁者による統治がどのような論理の下で行われているのかを考えます。

第10回

政治変動

1970年代以降、権威主義から民主主義へと移行する国家が急増し、19-20世紀の第一の波、第二次世界大戦後の第二の波と合わせて、それは民主化の「第三の波」と呼ばれます。これら体制の変動は決して民主化のみでなく、クーデターなどによる権威主義から別の権威主義への変動も見られます。この授業では政治変動が生じる際の条件やメカニズムを考察します。

第11回

紛争

政治とは何らかの対立を抱えるものです。多様な人々が暮らす社会においては常にどのような価値に重きを置くかをめぐり意見の対立が起こります。しかし、その対立が政治的な方法では解決されず、より急進的な形、すなわち武力衝突へと発展する場合があります。それは、例えば「多民族な社会であれば紛争が起こる」といった単純なものではありません。この授業では紛争が生じる条件やメカニズムを議論します。

第12回

政治経済

近代の学問では政治学と経済学はそれぞれ独立した分野として発展してきました。しかし実際には両者は密接に関わるものであり、互いに影響を及ぼします。この授業では中でも経済現象の政治的側面に焦点を当てます。なぜ国ごとに経済発展の度合いが異なるのか、なぜ一部の人々に富が集中するのか、どのようにして資源の分配方法は決められるのか。そのような経済問題の「政治」的要因を議論します。

第13回

ポピュリズム

現在、「ポピュリズム」が世界を席巻しています。アメリカのトランプ大統領の誕生、イギリスのEU離脱、また移民・難民への排外主義等が議論される際、ポピュリズムがよく結びつけられます。一見するとポピュリストは、既得権益化したエリートに対抗して「人民」に寄り添おうとするようにも見えますが、それの何が問題といえるのでしょうか。この授業では、ポピュリストとは何か、何が問題なのか、民主主義にどのような影響を及ぼすのかを議論します。

第14回

ジェンダー

「男は男らしく、女は女らしく」というジェンダー規範は社会的に作られたものです。それらジェンダー規範は、例えば「政治は男がやるもの」という考え方を生み出し、政治のあり方を規定します。この授業では、ジェンダーの視点から政治がどのように構造化されているかを考え、それらを是正するための方法を探ります。

第15回

まとめ

本コースで学んできた内容を振り返る中で、政治学がどのような問いに答えようとしているのかを考えます。その上で、今後の政治学の勉強の進め方について案内します。

授業実施形態

15回全ての授業を対面で実施します。

授業外学習の指示

政治学を学ぶには「自分の頭でしっかりと考えること」が重要です。政治は社会のありとあらゆる要素が複雑に絡み合う中で動くものですが、政治学の各研究はその一側面に絞り焦点を当てているに過ぎません。そのため、「政治」という問題を考えるには、これまでの研究がどのような側面に焦点を当ててきたのかを批判的に学びながら、複雑な政治現象を理解するためにはどのような研究が不足しているかについて自分自身の考えを持つことが大切です。まずは興味を持ったテーマの入門書からで良いので、実際に政治学の文献を手に取り、読み、そこで展開される議論について自分自身の言葉で考え、まとめるという習慣をつけてください。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記)

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

50%: 毎回の授業におけるManaba+Rへのコメント
50%: 期末レポート

成績評価方法(備考)

このコースでは、毎回の授業の最後にManaba+R上でその日の授業内容を踏まえたコメントを提出してもらいます。また、学期末には2000字のレポートをManaba+R上で提出してもらいます(レポートの題目、期日は授業内でアナウンスします)。毎回のコメント、期末のレポートは共に、1. 授業内容の理解度、2. 説明の論理性、3. オリジナリティを評価の軸として採点します。

受講および研究に関するアドバイス

一般に「政治」としてイメージされるものだけが政治ではありません。社会のあらゆるものに政治は存在します。その後に政治学を専攻するにしても、他の分野を専攻するにしても、この授業を通して学んだことが、自分自身が関心を持つ社会現象・社会課題を分析するための一つの「レンズ」になってもらえば嬉しいです。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

この授業では指定の教科書は使用しません。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
政治学 田村哲樹, 近藤康史, 堀江孝司 勁草書房 9784326302833 コース全体
比較政治学の考え方 久保慶一、末近浩太、髙橋百合子 有斐閣 9784641150317 コース全体
比較政治学 粕谷祐子 ミネルヴァ書房 9784623071449 コース全体
国家の社会学 佐藤成基 青弓社 9784787233806 第2回:国家
民族とネイション:ナショナリズムという難問 塩川伸明 岩波書店 9784004311560 第3回:ナショナリズム
民主主義とは何か 宇野重規 講談社 9784065212950 第4回:民主主義
民主主義対民主主義 : 多数決型とコンセンサス型の36ヶ国比較研究 アレンド・レイプハルト 勁草書房 9784326301584 第5回:執政制度
政党システムと政党組織 待鳥聡史 東京大学出版会 9784130321266 第6回:政党
民主主義の条件 砂原庸介 東洋経済新報社 9784492212202 第7回:選挙
独裁者のためのハンドブック ブルース・ブエノ・デ・メスキータ、アラスター・スミス 亜紀書房 9784750513317 第9回:権威主義
権威主義:独裁政治の歴史と変貌 エリカ・フランツ 白水社 9784560098219 第9回:権威主義/    第10回:体制変動
新戦争論:グローバル時代の組織的暴力 メアリー・カルドー 岩波書店 4000233785 第11回:紛争
政治経済学 : グローバル化時代の国家と市場 田中拓道、近藤正基、矢内勇生、上川龍之進 有斐閣 9784641150799 第12回:政治経済
ポピュリズムとは何か ヤン=ヴェルナー・ミュラー 岩波書店 9784000247962 第13回:ポピュリズム
女性のいない民主主義 前田健太郎 岩波書店 9784004317944 第14回:ジェンダー

参考書(使用頻度、その他補足)

授業内でも関連文献を紹介します。関心の持ったテーマについては各自で文献を読み進めてください。

参考になるwwwページ

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

コミュニケーションペーパー,manaba+R,学生との直接対話

備考

【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html