授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
34773:労働法(E) 2024 秋セメスター 金1 経済学部 佐藤 敬二 2

キャンパス

BKC

授業施設

コラーニングⅠ 105号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

 「格差社会」という認識が共通のものになりつつあります。たとえば、非正規労働者が全労働者の4割を超え、その賃金水準は正社員の半分ですし、男女間においても労働条件の大きな格差があります。また、若年労働者におけるいわゆるニートが増大しており、正社員への就職難は強まっています。この「格差社会」という認識は他方で、「勝ち組」志向を煽る考えでもあります。しかし正社員あるいは男性は「勝ち組」ではありません。正社員は、欧米よりも年間で2ヶ月から3ヶ月分もの長時間労働のもとにあり、年間1万人と推定されている過労死が発生しており、過労死の大半は男性です。ですから、「格差社会」というよりも、「過労死か不安定雇用かの選択を迫る社会」と考えるべきでしょう。この中で政府は、「勝ち組」志向に沿った労働法改定を行おうとています。果たして、労働者が働きやすい社会のためにはいかなる法制度であるべきなのか、考えていくことが本講義の目的です。
 そのために講義では、まず①具体的事例から法的論点を探しだす作業を行い、続いて②関連する法制度の解説を行い、③その論点についてのいくつかの考え方を紹介します。最後に④以上の三点についてまとめた自己点検を提出してもらいます。②は、法律と裁判例の解説ですが、現実社会においては守られていないことが多くみられますので、皆さんが社会に出た際に武器として使ってほしいと思います。④の提出物は、採点した上で、次回の講義開始前に返却する形でフィードバックしますので、それによって自らの理解度を自己点検してください。

受講生の到達目標

受講生は、次の2つの能力をつけることができます。
1.複雑な現実から、労働法上の論点を発見する力
2.論点について、労働法の基本視点を踏まえて、解決に向けて自ら考える力
労働法規や裁判例を理解することは当然の前提ですが、それを記憶しても複雑な現実には対処できません。労働法規や裁判例自身も大きく変動しています。自ら考えていくことが必須です。更にその際には、自分勝手な「考え」(これは単なる「戯言」です)ではなく、労働法の基本視点を踏まえて考えることが必要です。

事前に履修しておくことが望まれる科目

例年、法的な思考方法に戸惑う受講生が見られます。
その意味で、法学関連の講義を受講していれば、法的思考方法への戸惑いが減少するでしょう。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

第1回
労働法の概観

労働団体法、労働保護法、労働契約、労働協約、就業規則

2

第2回
①労務管理とジェンダー

Q:女性の昇進・昇格差別は法により是正できるだろうか
KW:男女雇用機会均等法、人事権

3

第3回
②雇用管理……:A.採用

Q:採用内々定の取り消しは救済されないのだろうか
KW:労働契約、採用内定

4

第4回
②雇用管理……:B.人事異動(配転・解雇)

Q:単身赴任命令に従わなければならないのだろうか
KW:人事異動、配転、整理解雇

5

第5回
②雇用管理……:C.多様な雇用形態

Q:パートタイマーは低賃金で使い自由に辞めさせることができるのだろうか
KW:パートタイム・有期労働法

6

第6回
③就業条件管理:A.労働時間

Q:残業を拒否することはできないのだろうか
KW:法定労働時間、変形労働時間、時間外労働

7

第7回
③就業条件管理:B.休息

Q:長期間の連続休暇をとることはできないのだろうか
KW:休憩、休日、年次有給休暇

8

第8回
③就業条件管理:C.賃金、福利厚生

Q:賃金を自由意思で放棄できるのだろうか
KW:賃金、福利厚生

9

第9回
④職場環境管理:A.ハラスメント

Q:ハラスメント防止のため使用者は職場環境保持義務を負うだろうか
KW:セクハラ、パワハラ

10

第10回
④職場環境管理:B.就業規則と懲戒

Q:使用者が決めたことには必ず従わなければならないのだろうか
KW:就業規則

11

第11回
④職場環境管理:C.労働安全衛生、労働災害補償

Q:過労死の認定基準はどうあるべきか
KW:労働安全衛生法、労働災害、安全配慮義務

12

第12回
⑤労使関係管理:A.労働組合

Q:仕事中あるいは職場内で組合活動はできるのだろうか
KW:リボン闘争、ビラ貼り

13

第13回
⑤労使関係管理:B.団体交渉

Q:労働組合はいかなる事項についても交渉を要求できるのだろうか
KW:経営権事項

14

第14回
⑤労使関係管理:C.団体行動

Q:プロ野球労組のストはは正当な争議行為なのだろうか
KW:経営干渉

15

第15回
⑥権利救済機構

裁判所、労働委員会、労働基準監督署

備考/Note
講義テーマは、人事労務管理論に対応する形で構成しています。

講義は、上の「Q」に挙げた具体的論点に沿って進めます。自分なりの答えを考えてみてください。

授業実施形態

15回の講義すべて対面講義で行います。

授業外学習の指示

 毎回の講義において次回講義用のリーディング・アサインメントを提示します。それは当該講義内容にかかわる初学者用の法学文献です。次回講義の最初に、そのリーディング・アサインメントに関する問題に解答してもらいます。次項目で示すように、この結果も成績評価の一要素となります。
 リーディング・アサインメントの読了に要する時間は個人差がありますが、初学者用の文献とは言え、法律学の文献にはなじみがないでしょうから、やはり3時間程度はかかるものと思います。講義方法の箇所で説明してるように、毎回、自己点検を提出し、次回にそれが返却されますので、理解の不十分な箇所について修正していく作業が必要です。これがいわゆる「復習」に該当し、1時間程度はかかると思います。大学設置基準上、講義時間の二倍の自学自習時間が必要とされていますので、予習・復習あわせて4時間程度を要することになります。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 40

事例に対して、法的論点、法、諸説、自説、を問う内容です。それぞれ、説明できている、不足がある、実質的に記述がない、の三段階で評価します。

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
0

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
60

毎回の小テストにおいて、講義の論点、法、諸見解をまとめて提出してもらい、それによって成績評価します。この小テストは、「受講生の到達目標」で挙げた三点について論述するものです。それぞれが少なくとも、講義で論じたレベルに達していることを、成績表の基準とします。毎回の小テストは、10点満点で採点して返却しますが、この点数は、各記述項目の記述レベルを点数化して可視化するものであり、その点数がそのまま成績評価となるものではありません(合計点数の6割以上で合格、という意味ではありません)。

成績評価方法(備考)

2022年度の合格率は、100%。
2019年度は、92.9%、2018年度は、100%、2017年度は、91.7%、2016年度は、90.0%、2014年度は、92.5%、2013年度は、89.0%、2012年度は、90.4%、2011年度は、87.2%、2010年度は、86.0%、2009年度は、92.7%、2008年度は、92.2%、2007年度は、90.1%でした。
2018年度の評価割合は、A+:7.7%、A:23.1%、B:46.2%、C:23.1%
2018年度は、A+:3.5%、A:27.6%、B:41.4%、C:27.6%
2017年度は、A+:9.1%、A:27.3%、B:27.3%、C:36.4%
2016年度は、A+:4.7%、A:20.6%、B:41.2%、C:33.3%。
*2020年度は、受講者(受講登録者ではありません)に占める合格者の割合(合格率)は100%でしたが、全面的にオンライン講義でしたから、参考にはならないように思います。2021年度も同様。

受講および研究に関するアドバイス

若い学生の皆さんは、純粋に正論を追及できる一方で、現実離れして理屈だけになってしまうことがあります。逆に社会人学生の皆さんは、違法状態の横行している現実社会に流されてしまう傾向が強くみられます。ぜひ、当たり前の社会感覚をもって臨んでください。

教科書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
労働法Ⅱ-個別的労働関係法-[第3版] 吉田美喜夫・名古道功・根本到編 法律文化社 978-4-589-03936-1

教科書(使用頻度、その他補足)

労働法分野では毎年、重要な法改定が続いていますので、最新の教科書でなければなりません。上記の書籍は、直接は第2回から第11回までの講義で使うためのものですし、法学部生用ですので若干むつかしいとも思いますが、経済学部の皆さんであっても社会に出て働き始めてからの参考書として所持しているのが有益だと考えましたので、教科書に指定しました。

参考書

参考書(使用頻度、その他補足)

講義全体の参考書は特に挙げません。講義の個々のテーマについての参考文献は、その都度、紹介します。

参考になるwwwページ

私自身のWebPageを挙げておきます。
http://www.ritsumei.ac.jp/~satokei/
過去の講義レジュメ(試験問題とその解説も含む)、文献検索のリンク集、社会法資料集などが参考になるでしょう。

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

インタラクティブシート,その他(教員より別途指示)

備考

1.初回の講義を欠席する悪弊が蔓延しています。しかし、受講上の注意や試験の説明は講義の初回に行いますから、必ず出席してください。受講しないことによる不利益は受講生自身が負い、欠席者に対して後で私が繰り返して説明することあり得ません。
2.講義に欠席する場合には、理由を書いて一週間前までに私に提出してください(書式は私のWebSiteに掲載しているもの、課外活動と教育・介護実習の場合は所定の用紙)。私から課題を課します。欠席した場合には、欠席した回の講義については自ら勉強し、資料も入手した上で、次回講義に臨んでください。
【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html