授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
12787:[2025 春セメスター]IR18‐DJ104 平和学入門(R1) § 12788:IR-DR104 平和学入門(R1) 2025 春セメスター 木4 国際関係学部 君島 東彦 2

キャンパス

衣笠

授業施設

恒心館KS305号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法



 この科目は受講生に対する知識の注入をおよそ目的としていない。教育とは知識の注入ではない。教育とは自らの生き方・世界観を絶えず吟味し変革していくプロセスであり、教師はその産婆である。この講義は学生諸君が自ら化学反応を起こすための触媒である。この講義が学生諸君の世界認識・自己変革の手助けとなることを切に願っている。また、学問とは常識批判である。学生諸君の「先入観を裏切る」講義をめざしている。

 この科目は立命館大学国際関係学部1回生以上を対象とする平和学講義である。平和に関する思想は古くからあり、また哲学、政治学、法学などの諸学問が平和について考察することも古くからあるが、他の学問から区別される固有の学問として平和学が始まったのは1950年代の冷戦期である。平和学とは「戦争の原因と平和の条件を探究する学問」である。平和学は米ソ核戦争による世界の破滅を防ぐための知的営為として始まった。

 戦争を克服することが平和学の課題であることは比較的明確であるが、1960年代に途上国──グローバル・サウス──の研究者から、「途上国は戦争がなくても平和とはいえない」という主張がなされ、それをうけるかたちで、平和の新しい捉え方が提起された。それは「暴力の克服としての平和」という捉え方であり、ここでいう暴力には暴力をふるう主体が明確な「主体的暴力あるいは直接的暴力」──戦争はその典型である──と暴力を行使する主体が不明確な「構造的暴力」──社会的差別のような社会構造に根ざした暴力──の両方が含まれる。そして、主体的暴力──戦争──のない状態を「消極的平和」、構造的暴力のない状態を「積極的平和」と捉えるようになった。このように考えると、平和とは「消極的平和+積極的平和」である。

 2単位の授業でカバーできる範囲は本当に限られている。この講義は触媒であって、受講生諸君が今後の4年間の学びの中で自分の問題意識を発展させることを期待している。また、平和学は知識を獲得して終わる学問ではない。平和学とは、「自分自身の生き方を変革し、世界を平和的に変革するプロジェクト」である。この科目の履修を終えた学生諸君が、このプロジェクトに参加することを切望している。平和学が発展するばかりで、世界が平和にならないのでは意味がない。われわれが平和に少しずつ近づくために、この科目が何らかの役に立つならば、担当者としてうれしく思う。

 この授業では、パワーポイントを使う講師のレクチャーに加えて、毎時間、2回ないし3回程度のグループ・ディスカッションを行う。講師から授業内容を深めるための問いを発する。毎時間、その問いを受けて、深く考えてほしい。

受講生の到達目標

・ 核時代としての現代を理解する。
・ 平和構築の諸相を理解する。
・ 世界経済と平和について理解する。
・ 戦後世界秩序の中の日本と東アジアを理解する。

事前に履修しておくことが望まれる科目

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

I 平和をどのようにとらえるか
1 ロシア・ウクライナ戦争、ガザ危機、東アジアの緊張・対立

・ロシアはなぜウクライナに侵攻したのか
・我々はこの戦争をどのように終わらせうるか
・東アジアにおける戦争をいかに防ぐか
【+R授業】詳細はmanabaの+R授業で確認すること。

2

2 ノーベル平和賞とは何であるか、我々はどう考えるか

・ノーベル平和賞の120年をどう総括するか
https://www.nobelpeaceprize.org/
・ノーベル平和賞とは何であるか

3

Ⅱ 核時代としての現代
1 マンハッタン・プロジェクトがつくり出した世界

・核分裂反応の発見(1938)から原爆投下(1945)までの7年間
・17世紀科学革命以来の西洋文明の到達点としての原爆
・戦後世界の軍産官学複合体をつくり出した
・内藤酬『核時代の思想史的研究』(北樹出版、1985年)

4

2 広島、長崎の被爆について考える━━被爆の実相、平和博物館、芸術家の応答

・戦略爆撃、無差別爆撃という方法
前田哲男『新訂版 戦略爆撃の思想──ゲルニカ、重慶、広島』(凱風社、2006年)
・広島平和記念資料館
http://hpmmuseum.jp/
・長崎原爆資料館
https://nabmuseum.jp/
・平和博物館について
・原爆芸術

5

立命館大学国際平和ミュージアムを見学する

衣笠キャンパスにある国際平和ミュージアムに集合して、見学する。館長の君島が展示について解説する。

6

3 核時代とはどんな時代か?
   ━━人類はかろうじて核戦争を回避した━━

・A Time-Lapse Map of Every Nuclear Explosion Since 1945 by Isao Hashimoto
1945年から1998年までのすべての核爆発=核実験を記録した14分の映像
・ キューバ・ミサイル危機
・沖縄と核兵器

7

4 核時代における2つの展開━━核依存と反核平和

・核依存の方向性
核兵器開発競争、日本核武装の模索と断念、核の傘、核抑止論、原子力の平和利用、原爆製造工場としての原発
・反核平和の方向性
平和学の誕生、新しい世界秩序の追求、核軍縮・核廃絶をめざす動き、核兵器禁止条約

8

Ⅲ 平和構築の諸相━━冷戦後における平和の課題
1 国際社会はグローバル・サウスにどう向き合うか

・戦争と平和をめぐる思想的立場
現実主義ー正戦論ー絶対平和主義という伝統的三分論
軍国主義ー介入主義ー防衛主義ー漸進的平和主義ー絶対平和主義というキーデルの類型論
・peacemaking、peacekeeping、peacebuilding の違い
・人道的危機、虐殺、ジェノサイドにどう対処するか

9

2 安全保障とは何か━━安全保障の根源的捉え直し

・人間安全保障とはどのような考え方か
国連開発計画『人間開発報告書 1994』(国際協力出版会、1995年)
君島東彦「平和を実現する主体━━安全保障観の転換にも触れて」全国憲法研究会編『憲法問題10』(三省堂、1999年)
君島東彦「主権国家システムと安全保障論の現段階━━『人間の安全保障』をめぐって」日本公法学会編『公法研究』64号(日本公法学会、2002年)
人間の安全保障委員会『安全保障の今日的課題━━人間の安全保障委員会報告書』(朝日新聞社、2003年)
メアリー・カルドー著/山本武彦・宮脇昇・野崎孝弘訳『「人間の安全保障」論━━グローバル化と介入に関する考察』(法政大学出版局、2011年)
Christine Chinkin and Mary Kaldor, International Law and New Wars, Cambridge: Cambridge University Press, 2017
君島東彦「憲法9条と国際協調主義━━平和構築をめぐる議論を整理する」『憲法研究』3号(信山社、2018年)
南山淳・前田幸男編『批判的安全保障論』(法律文化社、2022年)

10

Ⅳ 世界経済と平和━━グローバル資本主義のもたらす暴力、暴力克服の模索
1 「グローバル・アパルトヘイト」(南北格差構造)を正義論と安全保障論から見る  

・グローバル・アパルトヘイト=シャンパン・グラス状の世界
・世界はなぜこうなっているのか
・それは正義にかなうのか
・そのような状態で世界は安全といえるのか
ポール・ロジャーズ『暴走するアメリカの世紀』(法律文化社、2003年)

11

2 グローバルな分配的正義をどのように実現するか

・グローバルな所得再分配
・グローバル・タックス、トービン税
・先進国から途上国への開発援助
上村雄彦編著『グローバル・タックスの理論と実践』(日本評論社、2019年)
チャールズ・ベイツ『国際秩序と正義』(岩波書店、1989年)
伊藤恭彦『貧困の放置は罪なのか』(人文書院,2010年)

12

Ⅴ 戦後世界秩序の中の日本と東アジア
1 戦勝国と敗戦国ーー国連と日本

・「覇権戦争」という考え方
・The United Nations(連合国=国際連合)がつくった戦後世界
・勝者が敗者の国内秩序=憲法を改革する
・白井聡『永続敗戦論━━戦後日本の核心』(太田出版、2013年)

13

2 平和研究としての憲法9条論

・君島東彦「日本国憲法の平和主義は日本の安全と世界の平和に貢献しているか」日本平和学会編『平和をめぐる14の論点』(法律文化社、2018年)
・君島東彦「六面体としての憲法9条━━憲法平和主義と世界秩序の70年」全国憲法研究会編『憲法問題29』(三省堂、2018年)

14

3 東アジアの平和をどのようにつくるか

・白永瑞『共生への道と核心現場━━実践課題としての東アジア』(法政大学出版局、2016年)
・許紀霖『普遍的価値を求める━━中国現代思想の新潮流』(法政大学出版局、2020年)
・君島東彦「東アジアの平和にとって日本国憲法とは何か」『政経研究』114号(2020年)

授業実施形態

授業は14回すべて教室における対面授業で行なう。対面授業のZoom配信および録画配信はしないので、必ず教室に来て授業を受けてほしい。この授業においては、教室におけるグループ・ディスカッション、教員との対話が重要な要素となっているので、教室に来るのは必須である。

授業外学習の指示

 教材をmanabaにアップロードするので、それを読むことを学びの基本とする。また、manabaにアップロードされている詳細なシラバスで紹介されているさまざまな文献を読むことを薦める。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 0

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
0

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
100

毎回の授業でグループ・ディスカッションを行う。出席とグループ・ディスカッションへの貢献度が40%、中間レポートが30%、期末レポートが30%の比率で評価する。

成績評価方法(備考)

受講および研究に関するアドバイス

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

教科書は指定しない。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
平和学事典 日本平和学会編 丸善出版
平和を考えるための100冊+α 日本平和学会編 法律文化社
戦争と平和を問いなおす━━平和学のフロンティア 君島東彦・名和又介・横山治生 法律文化社
平和学を学ぶ人のために 君島東彦 世界思想社
Peace: A Very Short Introduction Oliver P. Richmond Oxford University Press
平和理論入門 オリバー・リッチモンド 法律文化社
The Oxford International Encyclopedia of Peace 4 Volumes Nigel J. Young Oxford University Press
The Nobel Peace Prize: What Nobel Really Wanted Fredrik S. Heffermehl Praeger
原子爆弾の誕生(上・下) リチャード・ローズ 紀伊国屋書店
オッペンハイマー━━原爆の父と呼ばれた男の栄光と悲劇(上・下) カイ・バード&マーティン・シャーウィン PHP研究所
戦略爆撃の思想━━ゲルニカ、重慶、広島 前田哲男 凱風社
核時代の思想史的研究 内藤酬 北樹出版
近代日本150年━━科学技術総力戦体制の破綻 山本義隆 岩波新書
正しい戦争と不正な戦争 マイケル・ウォルツァー 風行社
Thinking about Peace and War Martin Ceadel Oxford University Press
International Law and New Wars Christine Chinkin and Mary Kaldor Cambridge University Press
国際秩序と正義 チャールズ・ベイツ 岩波書店
世界正義論 井上達夫 筑摩書房
貧困の放置は罪なのか━━グローバルな正義とコスモポリタニズム 伊藤恭彦 人文書院
暴走するアメリカの世紀━━平和学は提言する ポール・ロジャーズ 法律文化社
永続敗戦論━━戦後日本の核心 白井聡 太田出版
グローバル・タックスの理論と実践 上村雄彦 日本評論社
敗北を抱きしめて(上・下) ジョン・ダワー 岩波書店
共生への道と核心現場━━実践課題としての東アジア 白永瑞 法政大学出版局
普遍的価値を求める━━中国現代思想の新潮流 許紀霖 法政大学出版局
科学の社会史(上・下) 廣重徹 岩波現代文庫
批判的安全保障論 南山淳・前田幸男 法律文化社
13日間━━キューバ危機回顧録 ロバート・ケネディ 中公文庫
"核”を求めた日本━━被爆国の知られざる真実 「NHKスペシャル」取材班 光文社
核武装と知識人 岸俊光 勁草書房
平和学入門1 多賀秀敏 勁草書房
平和学入門2 多賀秀敏 勁草書房

参考書(使用頻度、その他補足)

第1回の授業のときに、詳細なシラバスを配布する予定である。このシラバスに、数十冊の参考書を挙げてあるので、これも参照してほしい。

参考になるwwwページ

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

コミュニケーションペーパー,学生との直接対話

備考

【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:https://secure.ritsumei.ac.jp/students/pathways-future/course/curriculum.html/