授業科目名 年度 学期 開講曜日・時限 学部・研究科 全担当教員 単位数
11317:(芸)博物館資料保存論(A) § 11318:博物館資料保存論(A) 2022 春セメスター 火2 文学部,映像学部,文学研究科 岡田 文男 2

キャンパス

衣笠

授業施設

啓明館KM401号教室

授業で利用する言語

日本語

授業の概要と方法

 本講義では、博物館・美術館等に収蔵されている「有形文化財」を保存・活用するうえで必要となる「モノ」について、それらが生産された環境や時代背景、素材や製作技法、保存方法、保存環境等の基礎的理解を深めることを目的とする。有形文化財の素材は有機質や無機質で構成されており、それらについて理化学的な知識を深めることは、「モノ」を良好な状態で保存していくうえでとりわけ重要である。本講義ではマクロは平安京の環境変遷から、ミクロは顕微鏡を用いた建造物塗装の変遷、仏像修理の履歴、漆製品や染織品など工芸品の調査結果まで扱う。講義の内容は考古学、歴史系の受講者を想定しているが、「モノ」を良好な状態で後世に伝えていくために文系・理系を超えた思考方法や探究方法が必要であることを解説する。本講義の特長は、伝世する美術工芸品や仏像彫刻、建造物塗装等の、現場における調査経験や、発掘調査で出土した遺物の保存処理経験をもとに、毎回、パワーポイントによりスライドを使用し、解説を加える点にある。フィードバックについては毎回の講義に対するコメントシートに書かれた「講義内容の感想・質問」について次回の講義で「質問に対する回答」という形で行う。オンライン講義の場合にはメールで質問を受け付け、次回に回答する。
キーワード:伝世品、考古資料、保存環境、材質調査、保存と活用

受講生の到達目標

有形文化財を保存・活用していくうえで、文化財の制作年代、制作技法や素材等の基礎的知識を習得することにより、文化財に関わる実践者(埋蔵文化財調査員、学芸員、修復士等)として必要最低限の判断と措置ができるようになる。

事前に履修しておくことが望まれる科目

 特に科目を指定することはしない。歴史都市京都の町に現存しているすべてのものが学習の機会となるはずである。そのため、積極的に市中に出かけ、考古学、建築史学、歴史地理学、自然地理学、民俗学、庭園学等の観点から景観、街並み、遺跡、博物館、美術館、資料館、寺社等を見学し、多様な文化遺産に興味関心を持つことを希望する。

授業スケジュール

授業回数/
担当教員(複数担当の場合)
テーマ
キーワード・文献・補足事項等
1

15回の講義概要の説明

 毎回の講義では博物館に収蔵された資料の保存と活用に重点を置き、伝世品、正倉院宝物、埋蔵文化財、保存処理、有機質遺物、金属製品、建造物塗装、漆工技術、石造品、日本列島、中国大陸、韓半島まで取り上げる。講義で扱う時代は縄文時代から近世まで、地域は日本国内、中国大陸、韓半島、遺物は伝世品、発掘品を扱う。初回に15回の講義概要を説明するが、受講者の意見を取り入れたうえで、授業内容を修正していく可能性がある。

2

伝世品の保存環境1

 博物館に収蔵された資料の保存を考えるうえで、正倉院宝物が1200年もの間、どのように守られてきたのか考察することはこれからの保存を考えるうえでとても重要である。そこで最初に正倉院宝物が保存されてきた環境について解説し、現代の博物館施設との比較を行う。正倉院、正倉院展図録、正倉院紀要、博物館の環境管理、温湿度管理、校倉

3

伝世品の保管環境2 

 前回に引き続き、博物館における環境管理について考える。その題材として『正倉院紀要』に取り上げられている正倉院宝物の保存管理に関する報告(PDF公開のもの)を取り上げ、伝製品の保存について受講者とともに考察を加える。

4

伝世品の保管環境3 

 正倉院に伝わる染織品の修理や調査法について解説する。比較として、古墳時代の繊維製品を取り上げる。調査法についても解説する。 大麻、苧麻、亜麻、黄麻、絹、古墳出土繊維製品、分光分析

5

伝世品の保存環境4 
螺鈿製品、貝製品の調査

 伝世した遺物について正倉院宝物のなかの螺鈿琵琶類、螺鈿背鏡、斑貝帯残欠を、比較として中国西安出土の螺鈿背鏡の調査事例を取り上げる。

6

伝世品の保存環境5 奈良時代における乾漆技法(伝世品を中心に)

 唐招提寺三尊、乾漆伎楽面、木屎の漆工技法調査、牽牛子塚古墳出土漆棺、安福寺漆棺、阿武山古墳出土漆棺を比較し、乾漆技法を取り上げる。プレパラート作製法など、遺物の調査法についても解説する。

7

伝世品の保存環境6 建造物塗装の修理と変遷

 平等院鳳凰堂、中尊寺金色堂、西本願寺御影堂等の建造物塗装の材質調査で得られえた知見を開設し、歴史的建造物の修理が歴史的にどのようどのように変遷したのか解説する。

8

考古資料と環境解析1 出土植物種実の分析

 平安京の井戸の埋土、鳥羽離宮の苑池跡より出土した種実分析を通してみた植生を取り上げる。井戸の埋土は閉鎖系であることが特徴であり、平安京における発掘調査のように小規模発掘からどのようにして環境復元を考えることができるのか、実践例を紹介する。あわせて池亭記との比較を行う。

9

 考古資料と環境解析2 木製品の樹種調査1

 低湿地遺跡からは膨大な量の木製品が出土する。周辺環境からどのように用材選択を行っ たのか、縄文時代、弥生時代の遺跡から出土した木製品を中心に周辺環境とどう関わっていたのかを分析結果から考察する。

10

考古資料と環境解析3 木製品の樹種調査2

  奈良・平安時代における材木調達の事例を長岡京から出土した井戸枠を通して考える。正倉院文書に残る造東大寺司 石山寺文書、絵巻物との比較を行う。木工品、木材分析、井戸枠、長岡京、正倉院文書

11

考古資料の保存と活用1(縄文・弥生時代の漆工技術)

 石川県三引遺跡調査、福井県鳥浜貝塚調査、埼玉県寿能遺跡調査、滋賀県滋賀里遺跡調査、秋田県戸平川遺跡調査、福岡市、佐賀県内における遺跡調査で出土した漆器について、塗装技法の調査結果からみた縄文人と漆のかかわりを考察する。漆工技術、縄文時代、竪櫛、糸玉、パイプ状ベンガラ 、クロメ。

12

考古資料の保存と活用2(古墳時代以降の漆工技術)

古墳時代以降の漆工技術の変遷を考察する。対象として靫、盾、平安時代以降の蒔絵、螺鈿、赤色顔料等を扱う。

13

考古資料の保存と活用3(中国・漢半島における漆工品)

 中国国内で生産された漢代の漆器は黒海付近やバイカル湖の周辺でも出土している。そうした漆器が発見された後、どのようにして保存され、展示に供されるか事例を紹介し、活用を考える。

14

考古資料の保存と活用4(中国・韓国における鉄製品の調査)

 中国陝西省西安市内より出土した漢代の刀剣の鞘に残る有機質の調査結果、木質、漆、繊維、顔料、韓国金海大成洞古墳より出土した遺物の調査結果から倭系遺物を取り上げる。

15

考古資料の保存と活用5(中国壁画の調査と顔料分析)

 西安出土理工大壁画墓、山西省太原市出土徐顕秀墓壁画、遼寧省慶陵壁画の紹介と顔料分析、剥ぎ取りを解説する。

授業実施形態

【BCPレベル1~2】
(受講登録者数次第)
第1週目、第2週目はメディア授業で実施します。
受講登録者数が教室定員以下の場合は、第3週目から対面授業を実施します。
受講登録者数が教室定員を超えた場合は、第3週目以降もメディア授業を継続します。ただし、グループ分け等の方法により対面授業を実施する場合もあります。
第3週目以降の授業実施形態は、本登録期間終了後にmanaba+Rで通知します。

【BCPレベル3~4】
(メディア授業)
メディア授業で実施します。

授業外学習の指示

文化財を文字情報だけで理解するのではなく、自分の足で博物館や寺社、発掘調査現場等を巡り、一つでも多く実物を見ることが本講義の予習と復習の実践につながる。京都という文化財に恵まれた環境を積極的に活用することが、授業外学習の効果を上げることに繋がるはずである。

成績評価方法

種別 割合(%) 評価基準等
定期試験(筆記) 0

しない

レポート試験
(統一締切日を締切とするレポート)
50

15回の講義の中からテーマを一つ選び、それについてさらに深化させた内容をレポートにまとめて提出する(50%)。

上記以外の試験・レポート、平常点評価
(日常的な授業における取組状況の評価)
50

毎回、講義の最後にコメントシートを配布するので、授業内容についての要約・質問等の提出をもって出席と認める。そのほかに前半と後半で2回の小レポートを課す。出席と小レポートの提出を勘案して平常点評価(50%)とする。オンライン講義が増えた場合には2回の小レポートを重視する。

成績評価方法(備考)

テキストは使用しない。

受講および研究に関するアドバイス

講義関連分野の研究方法について随時、相談に応じます。

教科書

教科書(使用頻度、その他補足)

教科書は使用しない。

参考書

書名 著者 出版社 ISBNコード 備考
文化財のための保存科学入門 京都造形芸術大学編 角川学芸出版 ISBN-10: 4046515031
木の考古学 伊東隆夫・山田昌久 海青社 ISBN978-4-66099-911-7
絹文化財の世界 奈良文化財研究所編 角川学芸出版 ISBN4-04-651973-8
博物館資料保存論 石崎武志 講談社 ISBN978-4-06-156503-6

参考書(使用頻度、その他補足)

毎回の授業において、当日の授業に関係した報告書等の参考文献を提示します。

参考になるwwwページ

授業内外における学生・教員間のコミュニケーションの方法

その他(教員より別途指示)

備考

【科目ナンバリング・カリキュラムマップはこちらから/Click here to see the Curriculum-Map and Course-Numbering】
URL:http://www.ritsumei.ac.jp//students/pathways-future/course/curriculum.html